前腕創縫合時の迷走神経反射が誘因と考えられた非閉塞性腸間膜虚血症の1例

症例は74歳,男性.ガラスで左前腕を受傷し,当院を受診した.局所麻酔下に約8cmの創部を縫合した.縫合後に迷走神経反射による血圧低下をきたしたため,輸液を行いながら経過観察していたが,約7時間後に下血と腹膜刺激症状を伴う腹痛とともにショック状態となった.循環管理を行い,原因精査のため腹部造影CTを施行したところ,血管閉塞のない腸管血流不全を認めたため,非閉塞性腸間膜虚血症を疑い,緊急手術を行った.回腸末端より口側50cmの回腸から横行結腸中央部までの腸管は壊死していたが,虫垂は正常で腸間膜動脈の拍動は良好であったため,非閉塞性腸間膜虚血症と診断した.結腸右半切除術を施行し,一期的吻合は避け,両...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 75; no. 11; pp. 3083 - 3087
Main Authors 石川, 博文, 石岡, 興平, 高, 済峯, 西和田, 敏, 向川, 智英, 渡辺, 明彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2014
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.75.3083

Cover

More Information
Summary:症例は74歳,男性.ガラスで左前腕を受傷し,当院を受診した.局所麻酔下に約8cmの創部を縫合した.縫合後に迷走神経反射による血圧低下をきたしたため,輸液を行いながら経過観察していたが,約7時間後に下血と腹膜刺激症状を伴う腹痛とともにショック状態となった.循環管理を行い,原因精査のため腹部造影CTを施行したところ,血管閉塞のない腸管血流不全を認めたため,非閉塞性腸間膜虚血症を疑い,緊急手術を行った.回腸末端より口側50cmの回腸から横行結腸中央部までの腸管は壊死していたが,虫垂は正常で腸間膜動脈の拍動は良好であったため,非閉塞性腸間膜虚血症と診断した.結腸右半切除術を施行し,一期的吻合は避け,両断端腸管による双孔式人工肛門を造設した.術後経過は良好で,後日,回結腸吻合を施行した.局所麻酔下の外傷創処置による迷走神経反射が誘因と考えられる非閉塞性腸間膜虚血症は極めて稀な病態であると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.75.3083