仰臥位低血圧症候群を呈した巨大腹部腫瘍の1例

症例は41歳,女性。2年前より腹部膨隆に気づいていたが放置していた。2008年8月より腹部腫大が憎悪し,歩行困難になったため近医を受診,精査加療目的で当科に紹介された。CT検査では上腹部から骨盤腔内を広汎に占拠する巨大腫瘍がみられ,腹腔内臓器が右背側に圧排されていた。患者は胸部不快感のため仰臥位になれず,両下肢の浮腫を伴っていた。血圧低下に伴い心電図モニターで不整脈が出現したため緊急手術を施行した。腫瘍は45×40×17cm,重量17kgで左卵巣腫瘍であった。術後循環動態は正常化し術後8日目に軽快退院した。巨大腹部腫瘍に対する手術は,手術手技の難易度よりも,腫瘍の胸腔圧迫による%肺活量の減少,...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 29; no. 6; pp. 899 - 901
Main Authors 野秋, 朗多, 河原, 秀次郎, 渡辺, 一裕, 平松, 友雅, 小林, 進, 矢永, 勝彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2009
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Summary:症例は41歳,女性。2年前より腹部膨隆に気づいていたが放置していた。2008年8月より腹部腫大が憎悪し,歩行困難になったため近医を受診,精査加療目的で当科に紹介された。CT検査では上腹部から骨盤腔内を広汎に占拠する巨大腫瘍がみられ,腹腔内臓器が右背側に圧排されていた。患者は胸部不快感のため仰臥位になれず,両下肢の浮腫を伴っていた。血圧低下に伴い心電図モニターで不整脈が出現したため緊急手術を施行した。腫瘍は45×40×17cm,重量17kgで左卵巣腫瘍であった。術後循環動態は正常化し術後8日目に軽快退院した。巨大腹部腫瘍に対する手術は,手術手技の難易度よりも,腫瘍の胸腔圧迫による%肺活量の減少,腫瘍摘出前後における循環動態の変動などのため術中術直後管理の難度が高い。よって特に緊急手術時は外科医と麻酔科医の緊密な協力が重要である。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.29.899