胃全摘後患者への末梢静脈栄養により顕在化した乳酸アシドーシスの1例

われわれは胃全摘術後患者に対する末梢静脈栄養にて顕在化した乳酸アシドーシスが,ビタミンB1の投与によって改善した症例を経験したので報告する.症例は79歳男性で腹痛,腹部膨満を主訴に来院.約3カ月前に胃全摘術を施行していた.精査にて絞扼性イレウスおよび腹膜炎と診断し,緊急手術を行った.術中よりアシドーシスを認め,壊死腸管切除後も遷延したが炭酸水素ナトリウム投与にて一旦改善した.しかし術翌日には糖質投与量の増加とともに再度アシドーシスが進行し呼吸状態も悪化.血中乳酸値が8.1nmol/Lと上昇していたため,乳酸アシドーシスを疑いビタミンB1(塩酸チアミン)を投与したところ速やかに改善し,乳酸値も正...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 69; no. 4; pp. 761 - 766
Main Authors 小篠, 洋之, 矢野, 正二郎, 石橋, 生哉, 今泉, 拓也, 白水, 和雄, 緒方, 裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2008
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.69.761

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Summary:われわれは胃全摘術後患者に対する末梢静脈栄養にて顕在化した乳酸アシドーシスが,ビタミンB1の投与によって改善した症例を経験したので報告する.症例は79歳男性で腹痛,腹部膨満を主訴に来院.約3カ月前に胃全摘術を施行していた.精査にて絞扼性イレウスおよび腹膜炎と診断し,緊急手術を行った.術中よりアシドーシスを認め,壊死腸管切除後も遷延したが炭酸水素ナトリウム投与にて一旦改善した.しかし術翌日には糖質投与量の増加とともに再度アシドーシスが進行し呼吸状態も悪化.血中乳酸値が8.1nmol/Lと上昇していたため,乳酸アシドーシスを疑いビタミンB1(塩酸チアミン)を投与したところ速やかに改善し,乳酸値も正常化した.本症例は胃全摘術後の潜在的なビタミンB1欠乏状態であった可能性があり,末梢静脈栄養にて乳酸アシドーシスが顕在化したと思われる.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.69.761