Edaravone による弓部大動脈手術時の脳保護効果

Free-radical scavengerとして開発されたedaravoneは,脳梗塞後の機能回復に有用とされているが,弓部大動脈手術時の脳保護効果についての実験的検討は行われていない.そこで脳保護法の一つである超低体温下選択的脳灌流法(SCP)において,実験的にedaravone投与による薬理学的脳保護効果を検証した.雑種成犬12頭を用いて,20℃の超低体温循環停止下に一般的な脳灌流量の1/2量である5 ml/kg/minで120分間のSCPを行った.SCPおよび復温開始時にedaravone 3 mg/kgを投与した群をE群(n=6)とし,投与しない対照群をC群(n=6)とした.体性感覚...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 40; no. 2; pp. 48 - 53
Main Authors 田中, 佳世子, 北中, 陽介, 幕内, 晴朗, 安藤, 敬, 大野, 真, 大沼, 繁子, 村上, 浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2011
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.40.48

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Summary:Free-radical scavengerとして開発されたedaravoneは,脳梗塞後の機能回復に有用とされているが,弓部大動脈手術時の脳保護効果についての実験的検討は行われていない.そこで脳保護法の一つである超低体温下選択的脳灌流法(SCP)において,実験的にedaravone投与による薬理学的脳保護効果を検証した.雑種成犬12頭を用いて,20℃の超低体温循環停止下に一般的な脳灌流量の1/2量である5 ml/kg/minで120分間のSCPを行った.SCPおよび復温開始時にedaravone 3 mg/kgを投与した群をE群(n=6)とし,投与しない対照群をC群(n=6)とした.体性感覚誘発電位(SEP),脳組織圧,pH,酸素分圧および脳組織血流量を測定し,最後に病理組織学的検索を行った.C群でSEPが完全復帰したのは6例中2例(33%)に留まったのに対し,E群では全例でSEPが完全復帰した(p=0.0140).また,C群の脳組織圧はE群よりも有意(p=0.0297)に高かった.しかし,pH,酸素分圧および脳組織血流量には有意差を認めなかった.病理組織学的検索にて,C群では大脳皮質の神経細胞内ニッスル顆粒の染色性が低下し,急性の虚血性変化を呈したものが多かったのに対し,E群では全例で染色性が維持された.以上の結果より,edaravoneは,超低体温下選択的脳灌流時の虚血障害を軽減する脳保護効果を有することが明らかとなった.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.40.48