後天性血友病Aによる術後胸壁内血腫の1例

後天性血友病Aに起因する重篤な胸壁筋層血腫の1例を経験したので報告する.症例は74歳男性で,労作時の呼吸困難感を主訴に受診され,高度気腫肺を背景とした右続発性気胸と診断された.入院時の血液検査所見にてPTは正常範囲で,APTTが61.2秒と延長を認めたが,ドレナージ開始後も多量のエアリークが持続し,入院後8日目に胸腔鏡下肺囊胞切除術を行った.手術時間は1時間6分,術中出血量は10 g未満の少量であった.術翌日にドレーンを抜去したところ,抜去創部直下に膨隆が出現し,胸壁筋層内血腫と診断された.輸血,胸帯圧迫を行い,血腫の拡大を制御した.血液検査にて血液凝固第VIII因子活性低下,第VIII因子抑...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 38; no. 4; pp. 402 - 409
Main Authors 久野, 真人, 宇野, 友規, 法華, 大助
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本呼吸器外科学会 15.05.2024
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.38.402

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Summary:後天性血友病Aに起因する重篤な胸壁筋層血腫の1例を経験したので報告する.症例は74歳男性で,労作時の呼吸困難感を主訴に受診され,高度気腫肺を背景とした右続発性気胸と診断された.入院時の血液検査所見にてPTは正常範囲で,APTTが61.2秒と延長を認めたが,ドレナージ開始後も多量のエアリークが持続し,入院後8日目に胸腔鏡下肺囊胞切除術を行った.手術時間は1時間6分,術中出血量は10 g未満の少量であった.術翌日にドレーンを抜去したところ,抜去創部直下に膨隆が出現し,胸壁筋層内血腫と診断された.輸血,胸帯圧迫を行い,血腫の拡大を制御した.血液検査にて血液凝固第VIII因子活性低下,第VIII因子抑制因子が検出され,後天性血友病Aと診断された.ステロイド投与を開始し,2週間後にAPTT,VIII因子活性の正常化を認め,投与開始後3週間で抑制因子の消失が確認された.後天性血友病Aは比較的稀な疾患ではあるが,術後出血性合併症で診断される報告も増えており,致死的な転機を辿る例も認める.早期診断及び治療介入が予後を左右するため,呼吸器外科領域においても知識を有しておくべき疾患である.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.38.402