肺葉切除後1ヵ月以上経過して心囊内出血による心タンポナーデを発症した1例

症例は58歳の男性で,Stage IA2の肺扁平上皮癌に対して左肺上葉切除を施行した.術後は順調に経過して退院となったが,術後41日目より右心不全症状が出現し,術後48日目に心タンポナーデの診断で緊急入院となった.心囊ドレナージで1400 mLの血性排液を認めたが,持続性の出血は見られず3日後にドレーンを抜去した.心大血管に異常はみられず,術中所見より心膜反転部を自動縫合器で噛み込んだことによる肺静脈断端からの心囊内出血と診断した.肺葉切除後の心タンポナーデは極めて稀であり,本機序が原因で術後1ヵ月以上経ってから発症した報告はない.心囊内操作を行っていない場合も発症する可能性があり,致死的とな...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 36; no. 7; pp. 799 - 804
Main Authors 沖, 智成, 山下, 貴司, 望月, 孝裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.11.2022
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.36.799

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Summary:症例は58歳の男性で,Stage IA2の肺扁平上皮癌に対して左肺上葉切除を施行した.術後は順調に経過して退院となったが,術後41日目より右心不全症状が出現し,術後48日目に心タンポナーデの診断で緊急入院となった.心囊ドレナージで1400 mLの血性排液を認めたが,持続性の出血は見られず3日後にドレーンを抜去した.心大血管に異常はみられず,術中所見より心膜反転部を自動縫合器で噛み込んだことによる肺静脈断端からの心囊内出血と診断した.肺葉切除後の心タンポナーデは極めて稀であり,本機序が原因で術後1ヵ月以上経ってから発症した報告はない.心囊内操作を行っていない場合も発症する可能性があり,致死的となりうる重要な合併症であるため報告する.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.36.799