造影剤腎症

心血管疾患の診療において,造影剤を用いて診断・治療する場面は多い.一方で,腎機能障害を併存している患者は多く,造影剤使用に苦慮する場面も多い.造影剤による直接的な尿細管障害と間接的な腎血流障害によって造影剤腎症は発症する.造影剤腎症の発症頻度は従来考えられていたよりも低いとされているが,一度造影剤腎症になると有効な治療法はなく,生命予後にも影響する可能性が指摘されている.造影剤使用前にリスク因子(慢性腎臓病・高齢・糖尿病など)を把握し,経動脈造影剤投与と経静脈造影剤投与のリスクの違いも理解しておく必要がある.リスクがある場合は,生理食塩液や重炭酸ナトリウムによる補液を行って発症予防に努め,診断...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 33; no. 3; pp. 143 - 147
Main Authors 根本, 卓, 松浦, 壮平, 櫻井, 祐補, 山之内, 大
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 22.05.2024
日本血管外科学会
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Summary:心血管疾患の診療において,造影剤を用いて診断・治療する場面は多い.一方で,腎機能障害を併存している患者は多く,造影剤使用に苦慮する場面も多い.造影剤による直接的な尿細管障害と間接的な腎血流障害によって造影剤腎症は発症する.造影剤腎症の発症頻度は従来考えられていたよりも低いとされているが,一度造影剤腎症になると有効な治療法はなく,生命予後にも影響する可能性が指摘されている.造影剤使用前にリスク因子(慢性腎臓病・高齢・糖尿病など)を把握し,経動脈造影剤投与と経静脈造影剤投与のリスクの違いも理解しておく必要がある.リスクがある場合は,生理食塩液や重炭酸ナトリウムによる補液を行って発症予防に努め,診断できる範囲内で最小限の造影剤使用量とする必要がある.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.24-00015