肺原発低分化型滑膜肉腫の一剖検例

症例は35歳の男性で,感冒様症状(咳嗽・微熱)と背部痛を主訴として来院した.胸部X線およびCT検査にて右上肺野に浸潤像を認め,経気管支的肺生検およびCT下肺生検による病理組織検査では,核異型の強い短紡錘形細胞の密な増殖像を示した.免疫組織化学的染色にて非上皮性腫瘍であることのほか特徴的な染色性を示さず,未熟な非上皮性悪性腫瘍(紡錘形細胞肉腫)と診断した.肺肉腫として放射線療法が施行され一時腫瘍縮小効果を得たが再増悪を来した.化学療法が施行されるも腫瘍縮小効果はなく,腫瘍の増大による呼吸床減少と心膜転移および心嚢液貯留による心タンポナーデの併発により,約1年9か月の経過で死亡し,剖検が実施された...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 70; no. 1; pp. 97 - 104
Main Authors 太田, 秀一, 乳井, 美樹, 廣瀬, 敬, 梅村, 宜弘, 奥田, 健太郎, 足立, 満, 瀧本, 雅文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.02.2010
Subjects
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma.70.97

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Summary:症例は35歳の男性で,感冒様症状(咳嗽・微熱)と背部痛を主訴として来院した.胸部X線およびCT検査にて右上肺野に浸潤像を認め,経気管支的肺生検およびCT下肺生検による病理組織検査では,核異型の強い短紡錘形細胞の密な増殖像を示した.免疫組織化学的染色にて非上皮性腫瘍であることのほか特徴的な染色性を示さず,未熟な非上皮性悪性腫瘍(紡錘形細胞肉腫)と診断した.肺肉腫として放射線療法が施行され一時腫瘍縮小効果を得たが再増悪を来した.化学療法が施行されるも腫瘍縮小効果はなく,腫瘍の増大による呼吸床減少と心膜転移および心嚢液貯留による心タンポナーデの併発により,約1年9か月の経過で死亡し,剖検が実施された.剖検材料による腫瘍組織の遺伝子検査でSYT-SSXキメラ遺伝子の発現が証明され,滑膜肉腫(synovial sarcoma)と確定診断した.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma.70.97