胃全摘後縫合不全治療に難渋したKounis症候群併存胃癌の1例

Kounis症候群は造影剤に対するアレルギーにて急性冠症候群を呈するものである.胃全摘後縫合不全をきたし,Kounis症候群のために治療選択に難渋した症例を経験した.症例は69歳,男性.胸部下行大動脈人工血管置換術の胃癌に対し胃全摘術を施行した.6日目に縫合不全にて緊急手術となり,食道空腸吻合部の完全離開を認めた.しかし,感染による組織の脆弱化と,食道と人工血管の癒着のため,食道断端の縫合閉鎖や経裂孔的な再吻合は困難でありドレナージのみで終了した.縫合不全部の感染コントロールが不十分であるため,再手術後食道瘻造設を検討したが,人工血管置換術,胃全摘術にて胸腹部からの血管が処理されており,頸部か...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 8; pp. 1523 - 1527
Main Authors 金高, 賢悟, 丸屋, 安広, 米田, 晃, 江口, 晋, 伊藤, 信一郎, 砂河, 由理子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.81.1523

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Summary:Kounis症候群は造影剤に対するアレルギーにて急性冠症候群を呈するものである.胃全摘後縫合不全をきたし,Kounis症候群のために治療選択に難渋した症例を経験した.症例は69歳,男性.胸部下行大動脈人工血管置換術の胃癌に対し胃全摘術を施行した.6日目に縫合不全にて緊急手術となり,食道空腸吻合部の完全離開を認めた.しかし,感染による組織の脆弱化と,食道と人工血管の癒着のため,食道断端の縫合閉鎖や経裂孔的な再吻合は困難でありドレナージのみで終了した.縫合不全部の感染コントロールが不十分であるため,再手術後食道瘻造設を検討したが,人工血管置換術,胃全摘術にて胸腹部からの血管が処理されており,頸部からの血流のみで胸部食道が栄養されている可能性があった.食道離断による遺残食道の壊死を危惧したが,Kounis症候群のために造影による評価ができず,治療方針決定に難渋した.右開胸にて食道抜去後,頸部食道瘻造設を行い重篤な感染症に至らず,遊離空腸による再建が可能であった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.1523