奇静脈結合と門脈結合の両者を合併した下大静脈低形成の一例

症例は25歳男性.不明熱精査のためのCT検査にて,肝裏面における下大静脈の欠損を疑われ紹介となった.超音波ならびに血管造影上,下大静脈は肝裏面で狭窄していたが,屈曲蛇行する血管を介して右房へ連続する血流が観察された.また左右腎静脈から頭側へ走行する複数の交通枝を介して拡張した奇静脈系血管と,限局性の35 mm大の囊状拡張を呈する左腎静脈も認められた.後者からは脾腎短絡の発達もみられ,両方向性あるいは腎静脈から脾静脈方向へ向かう血流が観察された.さらに軽度の脾腫も伴っていた.肝静脈カテーテル検査では肝静脈圧較差0.74 mmHgと正常で,肝静脈枝や肝内門脈枝に異常所見を認めず,肝組織検査でも特記...

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Published in肝臓 Vol. 58; no. 6; pp. 338 - 343
Main Authors 丸山, 紀史, 横須賀, 收, 小林, 和史, 清野, 宗一郎, 千葉, 哲博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2017
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.58.338

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Summary:症例は25歳男性.不明熱精査のためのCT検査にて,肝裏面における下大静脈の欠損を疑われ紹介となった.超音波ならびに血管造影上,下大静脈は肝裏面で狭窄していたが,屈曲蛇行する血管を介して右房へ連続する血流が観察された.また左右腎静脈から頭側へ走行する複数の交通枝を介して拡張した奇静脈系血管と,限局性の35 mm大の囊状拡張を呈する左腎静脈も認められた.後者からは脾腎短絡の発達もみられ,両方向性あるいは腎静脈から脾静脈方向へ向かう血流が観察された.さらに軽度の脾腫も伴っていた.肝静脈カテーテル検査では肝静脈圧較差0.74 mmHgと正常で,肝静脈枝や肝内門脈枝に異常所見を認めず,肝組織検査でも特記すべき所見を認めなかった.以上より,奇静脈結合と門脈結合の両者を伴った下大静脈低形成と診断された.脾腫は門脈系への流入量増大に伴った変化と考えられ,血行動態の推移に注意しつつ診療を継続している.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.58.338