十二指腸癌術後感染を契機に発症した後天性血友病Aの1例

症例は75歳,男性.十二指腸癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後48日目に高度貧血を認め,内視鏡検査では食道粘膜の出血を認め止血処置を行った.術後53日目に右下腹部に手拳大の硬結を触知し,CT検査にて右後腹膜血腫を認めた.術後59日目には右足関節に皮下血腫,術後65日目には更なる貧血の進行,CT検査では左臀部から股関節周囲に新たな血腫を認めた.同日の凝固系検査ではAPTT (76.8 sec)の単独延長を認めたため,更なる追加検査にて第VIII因子活性低下(4%)と第VIII因子インヒビター(8 BU/ml)の存在が確認され,後天性血友病Aと診断された.ステロイドと遺伝子組換え...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 9; pp. 1962 - 1967
Main Authors 萱原, 正都, 大西, 一朗, 材木, 良輔, 武居, 亮平, 八木, 康道, 牧田, 直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.78.1962

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Summary:症例は75歳,男性.十二指腸癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後48日目に高度貧血を認め,内視鏡検査では食道粘膜の出血を認め止血処置を行った.術後53日目に右下腹部に手拳大の硬結を触知し,CT検査にて右後腹膜血腫を認めた.術後59日目には右足関節に皮下血腫,術後65日目には更なる貧血の進行,CT検査では左臀部から股関節周囲に新たな血腫を認めた.同日の凝固系検査ではAPTT (76.8 sec)の単独延長を認めたため,更なる追加検査にて第VIII因子活性低下(4%)と第VIII因子インヒビター(8 BU/ml)の存在が確認され,後天性血友病Aと診断された.ステロイドと遺伝子組換え活性型凝固第VII因子製剤を投与することにより,抗第VIII因子抗体は陰性化し術後146日目に退院となった.本疾患の診断の遅れは致死的状況を招くこともあり,原因不明の異常出血を認めた場合には,鑑別に挙げることが重要である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.1962