孤立性特発性腹腔動脈解離の1例

症例は42歳男性で,突然,左背部に放散する左上腹部の激痛が出現し受診した.理学所見では左上腹部に軽度の圧痛のみで腹膜刺激徴候を認めず,白血球増多以外の血液検査異常所見を認めなかった.緊急で腹部ダイナミックCTを行うと,腹腔動脈の起始部が解離し固有肝動脈が途絶していることが分かり,孤立性特発性腹腔動脈解離(以下,本疾患)と診断した.治療は肝機能障害が伴わず全身状態が落ち着いていたため,保存的経過観察として降圧療法を開始した.その後数日で腹痛は改善し,第17病日に無症状で退院した.6カ月後の腹部ダイナミックCTで総肝動脈に径17mmの紡錘状の動脈瘤を認めたが,2年後の再評価で動脈瘤の悪化は無かった...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 74; no. 9; pp. 2406 - 2411
Main Authors 田中, 晴祥, 三輪, 高也, 福岡, 伴樹, 大島, 健司, 木村, 保則, 中尾, 昭公
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2013
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は42歳男性で,突然,左背部に放散する左上腹部の激痛が出現し受診した.理学所見では左上腹部に軽度の圧痛のみで腹膜刺激徴候を認めず,白血球増多以外の血液検査異常所見を認めなかった.緊急で腹部ダイナミックCTを行うと,腹腔動脈の起始部が解離し固有肝動脈が途絶していることが分かり,孤立性特発性腹腔動脈解離(以下,本疾患)と診断した.治療は肝機能障害が伴わず全身状態が落ち着いていたため,保存的経過観察として降圧療法を開始した.その後数日で腹痛は改善し,第17病日に無症状で退院した.6カ月後の腹部ダイナミックCTで総肝動脈に径17mmの紡錘状の動脈瘤を認めたが,2年後の再評価で動脈瘤の悪化は無かった.本疾患はまれな疾患であり,その病態・診療方針に関して定見はない.PubMedおよび医学中央雑誌から検索しえた本疾患68例(自験例含む)について検討を行った.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.74.2406