腹部鈍的外傷24年後に発症した遅発性小腸狭窄の1例

症例は50歳,男性.20歳時に機械に腹部を挟まれ経過観察入院となった既往がある.今回,腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診した.腹部全体に軽度の圧痛を認めたが反跳痛は認めず,造影CT検査で回腸に狭窄像と狭窄部口側の腸管拡張像を認めた.小腸狭窄の診断で入院5日目に開腹術を施行したところ,機械で挟まれた部位に一致して腹壁と大網・小腸間膜が直線状に癒着し同部位に小腸の狭窄を認めたため,癒着解除術+小腸部分切除術+虫垂切除術を施行した.術後腸蠕動の回復に時間を要したが,術後31日目に退院となった.腹部外傷後に一定期間を経てから小腸の狭窄症状を呈することがあり,遅発性小腸狭窄として知られている.多くは受傷後30...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 77; no. 6; pp. 1471 - 1476
Main Authors 阪本, 研一, 上松, 孝, 荒川, 信一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2016
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.77.1471

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Summary:症例は50歳,男性.20歳時に機械に腹部を挟まれ経過観察入院となった既往がある.今回,腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診した.腹部全体に軽度の圧痛を認めたが反跳痛は認めず,造影CT検査で回腸に狭窄像と狭窄部口側の腸管拡張像を認めた.小腸狭窄の診断で入院5日目に開腹術を施行したところ,機械で挟まれた部位に一致して腹壁と大網・小腸間膜が直線状に癒着し同部位に小腸の狭窄を認めたため,癒着解除術+小腸部分切除術+虫垂切除術を施行した.術後腸蠕動の回復に時間を要したが,術後31日目に退院となった.腹部外傷後に一定期間を経てから小腸の狭窄症状を呈することがあり,遅発性小腸狭窄として知られている.多くは受傷後30日以内に発症するとされるが,自験例のように長期間を経て発症することもあり,繰り返す腸閉塞の原因として遅発性腸閉塞の可能性を念頭に置き,問診で外傷既往を確認することが重要であると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.77.1471