E型肝炎ウイルス感染を契機に肝不全を来した慢性アルコール性肝障害の一例

症例は49歳男性.初診より2週間前からの倦怠感を自覚し,前医受診時に著明な黄疸,肝機能障害を指摘されるも入院治療を拒否し,外来にて経過観察となっていた.1週間後再診の際に急性肝不全の診断となり,当院紹介,入院加療を開始した.アルコール多飲歴があること,著明な黄疸,白血球増多,肝臓腫大の所見より重症アルコール性肝炎と診断し,ステロイド治療を開始したが,徐々に状態が悪化し,第30病日に死亡した.初診時のHEV-IgA抗体陽性であり,後日の精査によりHEV genotype 4(New Sapporo strain)の急性感染が判明した.本症例は重症アルコール性肝炎の臨床像に類似していたが,慢性肝障...

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Published in肝臓 Vol. 61; no. 7; pp. 374 - 381
Main Authors 小林, 智絵, 田中, 秀五, 横山, 達也, 松本, 将吾, 更科, 耕一郎, 川畑, 修平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 01.07.2020
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Summary:症例は49歳男性.初診より2週間前からの倦怠感を自覚し,前医受診時に著明な黄疸,肝機能障害を指摘されるも入院治療を拒否し,外来にて経過観察となっていた.1週間後再診の際に急性肝不全の診断となり,当院紹介,入院加療を開始した.アルコール多飲歴があること,著明な黄疸,白血球増多,肝臓腫大の所見より重症アルコール性肝炎と診断し,ステロイド治療を開始したが,徐々に状態が悪化し,第30病日に死亡した.初診時のHEV-IgA抗体陽性であり,後日の精査によりHEV genotype 4(New Sapporo strain)の急性感染が判明した.本症例は重症アルコール性肝炎の臨床像に類似していたが,慢性肝障害を背景にHEVの急性感染が急性肝不全の原因に関与していると考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.61.374