ドクターカーにて経皮的心肺補助装置を運搬し導入することで社会復帰した心原性心停止の1例

我々は,ドクターカーによってPCPSを運搬し導入することで救命された心原性心停止の1例を経験した。患者は46歳の女性で,突然の意識消失に続く強直間代性痙攣を来し,近医二次医療機関へ搬送された。ショックに対する初期治療が開始され,心電図上,急性心筋梗塞の疑いで緊急冠動脈造影を施行した。循環動態は不安定であり,左大腿動脈から大動脈内バルーンパンピングを開始して循環管理を行った。右冠動脈造影終了後,心肺停止となり,心肺蘇生が開始された。波形診断は心室細動で,電気的除細動と抗不整脈薬投与が施行された。冠動脈造影では冠動脈病変は認めなかった。CTにて,大動脈弁狭窄に伴う冠動脈循環不全により発生した難治性...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 25; no. 7; pp. 319 - 324
Main Authors 中嶋, 辰徳, 黒澤, 慶子, 石井, 圭亮, 野口, 隆之, 田邉, 三思
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2014
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Summary:我々は,ドクターカーによってPCPSを運搬し導入することで救命された心原性心停止の1例を経験した。患者は46歳の女性で,突然の意識消失に続く強直間代性痙攣を来し,近医二次医療機関へ搬送された。ショックに対する初期治療が開始され,心電図上,急性心筋梗塞の疑いで緊急冠動脈造影を施行した。循環動態は不安定であり,左大腿動脈から大動脈内バルーンパンピングを開始して循環管理を行った。右冠動脈造影終了後,心肺停止となり,心肺蘇生が開始された。波形診断は心室細動で,電気的除細動と抗不整脈薬投与が施行された。冠動脈造影では冠動脈病変は認めなかった。CTにて,大動脈弁狭窄に伴う冠動脈循環不全により発生した難治性心室細動と診断され,高次医療機関である当院に紹介となった。当院より紹介元医療機関まで,救急車型ドクターカーによって,専門医療スタッフと共に人工心肺補助装置の搬送を行った。心肺蘇生が継続されていたが,人工心肺補助法を速やかに導入し,初回の心肺停止から68分後に正常洞調律へ回復した。当院搬送後,大動脈弁置換術および集中治療が施行され,神経学的後遺症なく社会復帰を果たした。救急車型ドクターカーは,特殊大型医療機器搬送や専門医療チーム派遣にも有効と考えられる。特殊大型機器を車両に搭載する工夫や派遣チームの人選など,日常の準備および運用体制の構築が重要と考えられる。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.25.319