ショックを伴った外傷性腹壁ヘルニアに直接縫合閉鎖を兼ねた一期的閉腹を行った1例

症例は48歳男性。乗用車同士の衝突事故で救急搬送された。ショックを示唆するバイタルサインであったが,急速補液と輸血で循環動態が安定した。腹部CTで腹腔内出血を伴う外傷性腹壁ヘルニアと診断し,緊急手術とした。ヘルニア門に絞扼された腸管,腸間膜を開放すると腸間膜血管断裂部からの出血が確認できた。破綻血管を結紮して止血し,虚血に陥った小腸を切除吻合したところで心室細動となった。蘇生により容易に洞調律に復した。逆L字型開腹創は,腹壁ヘルニアとなっていた腹斜筋断裂部も含めて腹壁を縫合閉鎖し閉腹した。術後5日目に遅発性上行結腸穿孔が発生して再開腹を要したが,術後現在まで14ヵ月間,腹壁ヘルニアの再発なく経...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 39; no. 7; pp. 1247 - 1250
Main Authors 神藤, 修, 高木, 徹, 稲葉, 圭介, 鈴木, 昌八, 松本, 圭五, 宇野, 彰晋, 川端, 俊貴, 石川, 諄武, 落合, 秀人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.11.2019
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.39.1247

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Summary:症例は48歳男性。乗用車同士の衝突事故で救急搬送された。ショックを示唆するバイタルサインであったが,急速補液と輸血で循環動態が安定した。腹部CTで腹腔内出血を伴う外傷性腹壁ヘルニアと診断し,緊急手術とした。ヘルニア門に絞扼された腸管,腸間膜を開放すると腸間膜血管断裂部からの出血が確認できた。破綻血管を結紮して止血し,虚血に陥った小腸を切除吻合したところで心室細動となった。蘇生により容易に洞調律に復した。逆L字型開腹創は,腹壁ヘルニアとなっていた腹斜筋断裂部も含めて腹壁を縫合閉鎖し閉腹した。術後5日目に遅発性上行結腸穿孔が発生して再開腹を要したが,術後現在まで14ヵ月間,腹壁ヘルニアの再発なく経過している。循環動態が不安定な外傷性腹壁ヘルニアの緊急手術で,十分な腹腔内検索ができずに閉腹すべきと判断された場合,遅発性臓器損傷の可能性があるので,ヘルニア門は直接縫合閉鎖するのが妥当と考える。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.39.1247