後腹膜への広範な液体貯留が診断の契機となった膵頭部癌の1例

症例は58歳,女性.左側腹部痛,左大腿浮腫,発熱を主訴に受診した.血液検査にて炎症反応上昇,膵型アミラーゼ高値を認めた.腫瘍マーカーは正常範囲内であった.腹部造影CT検査では主膵管全長のびまん性拡張,左腎周囲腔から腸腰筋腹側,さらには大腿血管周囲にかけて広範な後腹膜液体貯留を認めたが,膵炎像,腫瘍性病変は認めなかった.腹部超音波検査,MRCP検査でも明らかな腫瘍は指摘できなかった.貯留液体の穿刺排液の結果,膵液漏出と判明した.上部消化管内視鏡検査の結果,Vater乳頭部癌を認め,同腫瘍による膵液流出障害に伴う膵炎,後腹膜液体貯留と判断した.手術は亜全胃温存膵頭十二指腸切除(SSPPD)を施行し...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 9; pp. 1939 - 1944
Main Authors 鎌田, 哲平, 下山, 雄也, 野尻, 卓也, 矢永, 勝彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
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Summary:症例は58歳,女性.左側腹部痛,左大腿浮腫,発熱を主訴に受診した.血液検査にて炎症反応上昇,膵型アミラーゼ高値を認めた.腫瘍マーカーは正常範囲内であった.腹部造影CT検査では主膵管全長のびまん性拡張,左腎周囲腔から腸腰筋腹側,さらには大腿血管周囲にかけて広範な後腹膜液体貯留を認めたが,膵炎像,腫瘍性病変は認めなかった.腹部超音波検査,MRCP検査でも明らかな腫瘍は指摘できなかった.貯留液体の穿刺排液の結果,膵液漏出と判明した.上部消化管内視鏡検査の結果,Vater乳頭部癌を認め,同腫瘍による膵液流出障害に伴う膵炎,後腹膜液体貯留と判断した.手術は亜全胃温存膵頭十二指腸切除(SSPPD)を施行したが,膵頭部の硬結が門脈と強固に癒着しており門脈合併切除を併施した.術後の病理組織診断は膵頭部癌であった.通常型膵癌とは異なり,非常に稀な発症形式,症状を呈した膵頭部癌の1例と考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.1939