再発乳癌に対するトラスツズマブ投与中に発症したたこつぼ型心筋症の1例

症例は67歳,女性.多発肺骨転移を伴う再発乳癌に対するトラスツズマブとゲムシタビン併用療法を施行中,息切れ・動悸が出現した.トラスツズマブによる心不全を疑った.心電図ではV3-6でSTの上昇および陰性T,V1-3で平坦Tから陰性Tを認めた.心エコーでは心尖部はsevere hypokinesisでEFは47%と低下していた.冠動脈造影では有意狭窄なく,左室造影では心基部のみ収縮し心尖部は高度低収縮であった.以上から,たこつぼ型心筋症と診断した.ハンプ・ヘパリン・フロセミドによる治療を行い,第19病日壁運動は正常化しEF66.6%となり,第26病日に退院となった.化学療法中のたこつぼ型心筋症の報...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 75; no. 7; pp. 1813 - 1817
Main Authors 長谷川, 聡, 原田, 郁, 大田, 洋平, 福島, 忠男, 泊, 咲江, 池, 秀之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2014
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Summary:症例は67歳,女性.多発肺骨転移を伴う再発乳癌に対するトラスツズマブとゲムシタビン併用療法を施行中,息切れ・動悸が出現した.トラスツズマブによる心不全を疑った.心電図ではV3-6でSTの上昇および陰性T,V1-3で平坦Tから陰性Tを認めた.心エコーでは心尖部はsevere hypokinesisでEFは47%と低下していた.冠動脈造影では有意狭窄なく,左室造影では心基部のみ収縮し心尖部は高度低収縮であった.以上から,たこつぼ型心筋症と診断した.ハンプ・ヘパリン・フロセミドによる治療を行い,第19病日壁運動は正常化しEF66.6%となり,第26病日に退院となった.化学療法中のたこつぼ型心筋症の報告はまれである.乳癌診療における化学療法では心筋障害を起こしうる薬剤が多いが,鑑別疾患の一つとして,たこつぼ型心筋症も念頭に置く必要がある.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.75.1813