川崎病に合併した残存腋窩動脈瘤の1手術例

川崎病罹患21年後に虚血症状を有した左腋窩動脈瘤閉塞症例にバイパス手術を施行し,症状の改善が得られたので報告する.症例は22歳,男性,1歳時に川崎病を罹患し,両側腋窩動脈瘤に対して20年間のアスピリン内服による抗血小板療法が行われていた.末梢動脈瘤の診断から21年後に上肢虚血症状を生じるようになり,3DCTA検査で左腋窩動脈瘤閉塞を診断した.手術は瘤切開,縫縮し,自家静脈を用いた腋窩-上腕動脈バイパス術を施行した.病理所見では内膜に粥腫の形成と中膜の層構造に乱れが生じ,部分的に中膜の肥厚がみられた.手術後に左上肢労作時の疲労感は著明に改善された.川崎病に併発する末梢動脈瘤は稀な疾患であるが,本...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 46; no. 6; pp. 320 - 324
Main Authors 今井, 伸一, 田中, 啓之, 廣松, 伸一, 明石, 英俊, 金本, 亮, 奈田, 慎一, 澤田, 健太郎, 細川, 幸夫, 新谷, 悠介, 桜井, 日直子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2017
Subjects
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.46.320

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Summary:川崎病罹患21年後に虚血症状を有した左腋窩動脈瘤閉塞症例にバイパス手術を施行し,症状の改善が得られたので報告する.症例は22歳,男性,1歳時に川崎病を罹患し,両側腋窩動脈瘤に対して20年間のアスピリン内服による抗血小板療法が行われていた.末梢動脈瘤の診断から21年後に上肢虚血症状を生じるようになり,3DCTA検査で左腋窩動脈瘤閉塞を診断した.手術は瘤切開,縫縮し,自家静脈を用いた腋窩-上腕動脈バイパス術を施行した.病理所見では内膜に粥腫の形成と中膜の層構造に乱れが生じ,部分的に中膜の肥厚がみられた.手術後に左上肢労作時の疲労感は著明に改善された.川崎病に併発する末梢動脈瘤は稀な疾患であるが,本症例のように遠隔期にも末梢動脈障害が残存・進行するものがあり,長期経過観察と部位,程度により手術を含めた治療法の検討が必要であると思われる.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.46.320