水腎症を呈し急速に進行した4型食道扁平上皮癌の1例

57歳,男性.食事のつかえ感が主訴であった.上部消化管内視鏡にて胸部中部食道に全周性狭窄があったが粘膜上皮は保たれていた.生検にて扁平上皮癌を認め,4型びまん浸潤性食道扁平上皮癌の診断となった.切除可能な臨床病期III期の診断で術前化学療法後根治切除の方針とした.術前化学療法にてStable Diseaseの診断で手術施行したが,奇静脈,気管,大動脈への浸潤があり,切除不可能として試験開胸術となった.術後早期から水腎症を生じ,術後2カ月で死亡した.4型食道扁平上皮癌は稀で,特徴的な進展形式として食道周囲組織への広範なリンパ管浸潤,節外浸潤が指摘されており,今症例は後腹膜まで進展し,水腎症を呈し...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 74; no. 7; pp. 1842 - 1849
Main Authors 新原, 正大, 坪佐, 恭宏, 永田, 仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2013
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.74.1842

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Summary:57歳,男性.食事のつかえ感が主訴であった.上部消化管内視鏡にて胸部中部食道に全周性狭窄があったが粘膜上皮は保たれていた.生検にて扁平上皮癌を認め,4型びまん浸潤性食道扁平上皮癌の診断となった.切除可能な臨床病期III期の診断で術前化学療法後根治切除の方針とした.術前化学療法にてStable Diseaseの診断で手術施行したが,奇静脈,気管,大動脈への浸潤があり,切除不可能として試験開胸術となった.術後早期から水腎症を生じ,術後2カ月で死亡した.4型食道扁平上皮癌は稀で,特徴的な進展形式として食道周囲組織への広範なリンパ管浸潤,節外浸潤が指摘されており,今症例は後腹膜まで進展し,水腎症を呈した最初の報告例と思われた.術前化学療法前後の精査では後腹膜への進展を指摘することは困難であった.4型食道扁平上皮癌において,根治手術の適否の評価は画像診断のみでは不十分な可能性がある.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.74.1842