慢性副鼻腔炎手術症例の呼吸機能の検討

背景:呼吸機能検査は耳鼻咽喉科でも頻回に施行されるが,耐術能を評価するためだけの検査となっている。そこで今回,呼吸機能検査結果に着目して,好酸球性副鼻腔炎(ECRS)に特徴的な異常を認めるか検討を行った。対象:2016年5月から2017年3月までの期間に,東北公済病院で慢性副鼻腔炎の診断で手術を実施した107例を対象とした。これら症例の臨床情報を,診療録を用いて後ろ向きに調査・検討を行った。結果:ECRS群46例と非ECRS群61例に対して手術が行われていた。ECRS群は非ECRS群に比してFEV1.0%と%V˙25の有意な低下を認めたが,各群から気管支喘息を合併した症例を除外して検討すると,...

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Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 59; no. 4; pp. 297 - 302
Main Authors 逸見, 朋隆, 鈴木, 淳, 小林, 祐太, 野村, 和弘, 菅原, 充, 香取, 幸夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2020
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Summary:背景:呼吸機能検査は耳鼻咽喉科でも頻回に施行されるが,耐術能を評価するためだけの検査となっている。そこで今回,呼吸機能検査結果に着目して,好酸球性副鼻腔炎(ECRS)に特徴的な異常を認めるか検討を行った。対象:2016年5月から2017年3月までの期間に,東北公済病院で慢性副鼻腔炎の診断で手術を実施した107例を対象とした。これら症例の臨床情報を,診療録を用いて後ろ向きに調査・検討を行った。結果:ECRS群46例と非ECRS群61例に対して手術が行われていた。ECRS群は非ECRS群に比してFEV1.0%と%V˙25の有意な低下を認めたが,各群から気管支喘息を合併した症例を除外して検討すると,ECRS群は,非ECRS群に比して有意な気道閉塞所見を認めなかった。FEV1.0%はJESRECスコアと有意な負の相関を認めた。ECRSの診断において,FEV1.0%異常(70未満)は感度15.2%,特異度91.8%,陽性尤度比1.85であり,%V˙25異常(80未満)は感度91.3%,特異度27.9%,陽性尤度比1.27であった。結語:ECRS群は術前の呼吸機能検査で有意なFEV1.0%と%V˙25の低下を認めたが,基礎疾患の喘息による影響が示唆された。FEV1.0%異常および%V˙25異常は,ECRSの診断において陽性尤度比が低く,術前診断に有用とは言い難い結果であった。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.59.297