腹腔鏡下肝嚢胞開窓術後に発症した遅発性横隔膜ヘルニアの1例
症例は64歳,女性.巨大肝嚢胞にて腹腔鏡下肝嚢胞開窓術を施行され,当科外来通院中.術後10カ月に腹部膨満,腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.CTにて横隔膜ヘルニアと診断され,同日当科に入院となった.入院翌日となっても痛みは軽快しなかったため,緊急手術の方針とした.開腹すると肝嚢胞開窓術の手術操作部から,横行結腸と小腸の一部が胸腔内に脱出し,嵌まり込んでいた.脱出した腸管を用手的に腹腔内に還納した.還納した腸管の血行は良好にて腸管切除は施行しなかった.ヘルニア門を観察すると,前回手術時に肝嚢胞壁を横隔膜より剥離したところに,10cmほどの横隔膜の筋線維に沿ったスリット状のヘルニア門があっ...
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Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 9; pp. 1839 - 1843 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
2018
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
DOI | 10.3919/jjsa.79.1839 |
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Summary: | 症例は64歳,女性.巨大肝嚢胞にて腹腔鏡下肝嚢胞開窓術を施行され,当科外来通院中.術後10カ月に腹部膨満,腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.CTにて横隔膜ヘルニアと診断され,同日当科に入院となった.入院翌日となっても痛みは軽快しなかったため,緊急手術の方針とした.開腹すると肝嚢胞開窓術の手術操作部から,横行結腸と小腸の一部が胸腔内に脱出し,嵌まり込んでいた.脱出した腸管を用手的に腹腔内に還納した.還納した腸管の血行は良好にて腸管切除は施行しなかった.ヘルニア門を観察すると,前回手術時に肝嚢胞壁を横隔膜より剥離したところに,10cmほどの横隔膜の筋線維に沿ったスリット状のヘルニア門があった.ヘルニア嚢はなく仮性ヘルニアであった.横隔膜を直接縫合閉鎖し,メッシュにて補強して手術を終えた.晩期合併症としての横隔膜ヘルニアを起こさないために,横隔膜と癒着している嚢胞壁は温存する方が安全と思われる. |
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ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.79.1839 |