血腫による肺動脈圧排で人工心肺離脱困難となった弓部大動脈瘤破裂の1例

弓部大動脈瘤被覆破裂に対する弓部大動脈置換術の術中に,血腫拡大から肺動脈狭窄をきたし,人工心肺離脱が困難となった1例を経験した.77歳男性が,胸背部痛を自覚し当院に救急搬送された.CTで66 mmの弓部大動脈瘤と瘤周囲の血液漏出像を認め,弓部大動脈瘤被覆破裂と診断した.待機的にオープンステントグラフトを用いた弓部大動脈置換術を施行したが,人工心肺離脱時に血圧低下と酸素化不良を認めた.肺動脈狭窄を疑い術中肺動脈造影を施行したところ,左右肺動脈の高度狭窄が判明した.自己拡張型ステントを留置し,人工心肺を離脱することに成功した.術後60病日にリハビリ継続のため転院となり,現在は独歩で外来通院されてい...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 49; no. 5; pp. 295 - 299
Main Authors 阿部, 慎司, 松本, 嶺, 上久保, 康弘, 高平, 真
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.09.2020
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.49.295

Cover

More Information
Summary:弓部大動脈瘤被覆破裂に対する弓部大動脈置換術の術中に,血腫拡大から肺動脈狭窄をきたし,人工心肺離脱が困難となった1例を経験した.77歳男性が,胸背部痛を自覚し当院に救急搬送された.CTで66 mmの弓部大動脈瘤と瘤周囲の血液漏出像を認め,弓部大動脈瘤被覆破裂と診断した.待機的にオープンステントグラフトを用いた弓部大動脈置換術を施行したが,人工心肺離脱時に血圧低下と酸素化不良を認めた.肺動脈狭窄を疑い術中肺動脈造影を施行したところ,左右肺動脈の高度狭窄が判明した.自己拡張型ステントを留置し,人工心肺を離脱することに成功した.術後60病日にリハビリ継続のため転院となり,現在は独歩で外来通院されている.ヘパリン投与後に血腫拡大により手術中に肺動脈狭窄が進行し,ステント留置により人工心肺を離脱し得た稀な症例と思われ報告する.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.49.295