腹腔鏡下に治療した魚骨による腸管不顕性穿孔に伴った腹部放線菌症の1例

症例は79歳の女性で,下腹部の膨満感を訴え近医を受診し,精査目的に当院へ紹介された.CTで下腹部腹壁に線状の石灰化陰影を含む膿瘍を認め,膿瘍直下にも線状の石灰化陰影を認めた.魚骨穿孔による腹壁膿瘍を疑い,診断と治療を兼ねて腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると,腹壁に大網が炎症性に強固に癒着し,腹壁内に膿瘍形成を認めた.消化管に明らかな穿孔部位は認めなかった.腹腔鏡下に膿瘍と大網を切離し摘出した.切除標本内からは魚骨を認め,病理組織学的検査で膿瘍から放線菌塊を検出したため,魚骨の腸管不顕性穿孔に伴った腹部放線菌症と診断した.術後経過は良好で,第3病日に退院となった.現在外来で経過観察中であ...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 76; no. 8; pp. 1953 - 1958
Main Authors 松井, 琢哉, 野々山, 敬介, 渡邊, 貴洋, 田中, 守嗣, 近藤, 靖浩, 清水, 保延
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2015
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.76.1953

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Summary:症例は79歳の女性で,下腹部の膨満感を訴え近医を受診し,精査目的に当院へ紹介された.CTで下腹部腹壁に線状の石灰化陰影を含む膿瘍を認め,膿瘍直下にも線状の石灰化陰影を認めた.魚骨穿孔による腹壁膿瘍を疑い,診断と治療を兼ねて腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると,腹壁に大網が炎症性に強固に癒着し,腹壁内に膿瘍形成を認めた.消化管に明らかな穿孔部位は認めなかった.腹腔鏡下に膿瘍と大網を切離し摘出した.切除標本内からは魚骨を認め,病理組織学的検査で膿瘍から放線菌塊を検出したため,魚骨の腸管不顕性穿孔に伴った腹部放線菌症と診断した.術後経過は良好で,第3病日に退院となった.現在外来で経過観察中であるが,再発は認めていない.腹腔鏡下に治療した魚骨による腸管不顕性穿孔に伴った腹部放線菌症の1例を経験したので報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.76.1953