甲状腺穿刺吸引細胞診後の一過性甲状腺腫大の1例

症例は40歳,女性.職場健診で右甲状腺腫瘤を指摘され精査となった.超音波検査で右甲状腺上極に20mm大の腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診が施行された.細胞診の結果は濾胞性腫瘍,鑑別困難であった.穿刺後30分程度経過してから前頸部の腫大および頸部から両耳後部にかけての疼痛,嚥下時の咽頭痛が急激に出現した.呼吸困難,嗄声は認めなかった.超音波検査で甲状腺両葉の著明な浮腫状の腫大を認め,内部にひび割れ状の間隙を認めた.また,胸鎖乳突筋・前頸筋群などの甲状腺前面の組織の腫大も認めた.ソルメドロール125mgを点滴し,経過観察したところ6時間後に咽頭痛が改善し,18時間後には頸部の腫脹は消失した.嚥下時のつか...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 77; no. 9; pp. 2153 - 2158
Main Authors 森岡, 淳, 加藤, 健宏, 堀, 明洋, 高木, 健裕, 酒徳, 弥生, 渡邊, 学
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2016
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.77.2153

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Summary:症例は40歳,女性.職場健診で右甲状腺腫瘤を指摘され精査となった.超音波検査で右甲状腺上極に20mm大の腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診が施行された.細胞診の結果は濾胞性腫瘍,鑑別困難であった.穿刺後30分程度経過してから前頸部の腫大および頸部から両耳後部にかけての疼痛,嚥下時の咽頭痛が急激に出現した.呼吸困難,嗄声は認めなかった.超音波検査で甲状腺両葉の著明な浮腫状の腫大を認め,内部にひび割れ状の間隙を認めた.また,胸鎖乳突筋・前頸筋群などの甲状腺前面の組織の腫大も認めた.ソルメドロール125mgを点滴し,経過観察したところ6時間後に咽頭痛が改善し,18時間後には頸部の腫脹は消失した.嚥下時のつかえ感は72時間後まで残存した.プレドニゾロン15mgを3日間,その後10mgに減量して3日間内服した.甲状腺穿刺吸引細胞診後の一過性甲状腺腫大は稀な合併症である.文献的考察を踏まえて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.77.2153