上腕骨異常骨折で発見されたPTHrP産生胃癌の1例

症例は78歳,男性.約4kgの小型犬を抱き上げた際に発症した左上腕骨骨折を主訴に来院した.精査にて幽門部,幽門前庭部に重複胃癌を認め骨転移が疑われたが,骨シンチグラフィーは代謝性骨疾患を疑う所見であった.骨接合術を行った際に採取した骨組織病理診断は悪性所見を認めず,また採血でPTHrP,Caの上昇とPTHの低下を認めたため,PTHrP産生胃癌によるhumoral hypercalcemia of malignancy(以下,HHM)とそれに伴う異常骨折と診断し,幽門側胃切除術を施行した.補助化学療法としてS-1投与を行い術後3年半が経過したが,再発は認めていない.HHMを合併した胃癌の予後は厳...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 6; pp. 1282 - 1287
Main Authors 林, 憲吾, 奥田, 俊之, 平沼, 知加志, 加藤, 洋介, 小竹, 優範, 原, 拓央
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
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Summary:症例は78歳,男性.約4kgの小型犬を抱き上げた際に発症した左上腕骨骨折を主訴に来院した.精査にて幽門部,幽門前庭部に重複胃癌を認め骨転移が疑われたが,骨シンチグラフィーは代謝性骨疾患を疑う所見であった.骨接合術を行った際に採取した骨組織病理診断は悪性所見を認めず,また採血でPTHrP,Caの上昇とPTHの低下を認めたため,PTHrP産生胃癌によるhumoral hypercalcemia of malignancy(以下,HHM)とそれに伴う異常骨折と診断し,幽門側胃切除術を施行した.補助化学療法としてS-1投与を行い術後3年半が経過したが,再発は認めていない.HHMを合併した胃癌の予後は厳しいとされているが,報告例と比較し本症例は長期生存が得られていた.その理由として,本症例はPTHrPの上昇が過去の報告例と比べ穏やかであったことが考えられ,PTHrPが予後の指標となる可能性が推察された.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.1282