情報通信技術を活用して構築した救急搬送患者登録システムの有用性
目的:大阪府泉州医療圏においては,平成23年9月より情報通信技術(Information and communication technology)を活用し,個別症例における病院前活動から搬入後経過までの一連の情報を地域網羅的かつ迅速に把握するための救急搬送患者登録システムを構築し運用を開始した。我々は,このシステムに登録されたデータの正確性を検証することを目的とした調査を行った。方法:平成24年の1年間に医療圏内において現場より直送された救急搬送症例全例を対象とし,システムに登録されたデータから得られた患者情報の集計値を消防の実態調査から得られた実数値と比較した。結果:本システムの導入により...
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Published in | 日本救急医学会雑誌 Vol. 25; no. 9; pp. 693 - 702 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本救急医学会
2014
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-924X 1883-3772 |
DOI | 10.3893/jjaam.25.693 |
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Summary: | 目的:大阪府泉州医療圏においては,平成23年9月より情報通信技術(Information and communication technology)を活用し,個別症例における病院前活動から搬入後経過までの一連の情報を地域網羅的かつ迅速に把握するための救急搬送患者登録システムを構築し運用を開始した。我々は,このシステムに登録されたデータの正確性を検証することを目的とした調査を行った。方法:平成24年の1年間に医療圏内において現場より直送された救急搬送症例全例を対象とし,システムに登録されたデータから得られた患者情報の集計値を消防の実態調査から得られた実数値と比較した。結果:本システムの導入により,対象症例39,610例のうち28,699例の症例で,病院前活動から搬入後経過までの一連の情報が得られた。システムから集計した疾患別の患者数の割合や搬入後経過の内訳は,四肢外傷を除いて概ね消防の実態調査の実数値と一致していた。脳卒中疑い症例を対象とした詳細内容の比較では,搬送先選定状況や病院前判断の質の評価に関する内容において,システムと実態調査との間でずれが生じていた。とくに病院前の診断感度と陽性的中率は,システムの集計値では71.2%,62.5%であるのに対し,消防の実態調査の実数値では87.4%,70.9%と,いずれもシステムの方が有意に低値であった。考察:システムの集計値と消防の実態調査の実数値とのずれは,主に消防・医療機関双方の病名に関する入力の正確性の問題に起因していた。個別症例の事後検証を併用すれば,システムにより救急搬送症例の実態把握が可能であると思われた。結語:本システムの運用により,医療圏規模の救急搬送症例の実態を迅速に把握し得る。 |
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ISSN: | 0915-924X 1883-3772 |
DOI: | 10.3893/jjaam.25.693 |