急性虫垂炎との鑑別が困難であった虫垂骨髄性肉腫の1例

骨髄性肉腫(myeloid sarcoma;MS)は,急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia;AML)を背景に,白血病細胞が髄外に腫瘤を形成する疾患である.われわれは虫垂に発生した非常に稀なMSの症例を経験した.自験例は診断・治療の判断が難しく,貴重な症例と思われたため報告する.症例は64歳の男性.2年前にAMLに対して化学療法を行った後,二次性骨髄異形成症候群を発症し,再度化学療法を行った.数日前からの発熱,CTで末端優位の虫垂腫大を認め,急性虫垂炎と診断した.汎血球減少,化学療法に伴う間質性肺炎に対し抗菌薬およびステロイド加療中であり,保存的加療への反応性が懸念され...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 8; pp. 1544 - 1549
Main Authors 前田, 杏梨, 高橋, 広城, 田中, 達也, 松尾, 洋一, 瀧口, 修司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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Summary:骨髄性肉腫(myeloid sarcoma;MS)は,急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia;AML)を背景に,白血病細胞が髄外に腫瘤を形成する疾患である.われわれは虫垂に発生した非常に稀なMSの症例を経験した.自験例は診断・治療の判断が難しく,貴重な症例と思われたため報告する.症例は64歳の男性.2年前にAMLに対して化学療法を行った後,二次性骨髄異形成症候群を発症し,再度化学療法を行った.数日前からの発熱,CTで末端優位の虫垂腫大を認め,急性虫垂炎と診断した.汎血球減少,化学療法に伴う間質性肺炎に対し抗菌薬およびステロイド加療中であり,保存的加療への反応性が懸念されたため,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.切除標本では虫垂は末端優位に腫大し,病理組織学的には同部位に大型の芽球様細胞が集簇しており,MSの診断を得た.急性骨髄性白血病患者が腹痛,発熱を呈し,画像上虫垂の腫大を認めた場合,診断かつ治療目的に早期手術の検討が必要である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.1544