小腸の放射線性腸炎に対する外科治療

放射線治療後の小腸の放射線性腸炎は,腸閉塞や瘻孔形成をきたし治療に難渋する.側々吻合バイパス術では,瘻孔形成症例において効果が低いこと,また巨大なblind loopを形成することなどが問題となる.近年,回盲部を含めた小腸大量切除が予後良好との報告があるが,手術侵襲が大きく,元来癒着も激しいため困難なことが多い.そこで,責任病巣より口側の小腸を切離し,口側断端を横行結腸に吻合,肛門側断端を皮下に吊り上げることで,上記の問題に対応したバイパス術を施行している.対象は,小腸の瘻孔形成が3例,難治性イレウスが2例である.手術では放射線の影響がないと思われる口側小腸を切離し,口側の断端を横行結腸へ吻合...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 6; pp. 1196 - 1200
Main Authors 久倉, 勝治, 榎本, 剛史, 田村, 孝史, 黒田, 順士, 大河内, 信弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.78.1196

Cover

More Information
Summary:放射線治療後の小腸の放射線性腸炎は,腸閉塞や瘻孔形成をきたし治療に難渋する.側々吻合バイパス術では,瘻孔形成症例において効果が低いこと,また巨大なblind loopを形成することなどが問題となる.近年,回盲部を含めた小腸大量切除が予後良好との報告があるが,手術侵襲が大きく,元来癒着も激しいため困難なことが多い.そこで,責任病巣より口側の小腸を切離し,口側断端を横行結腸に吻合,肛門側断端を皮下に吊り上げることで,上記の問題に対応したバイパス術を施行している.対象は,小腸の瘻孔形成が3例,難治性イレウスが2例である.手術では放射線の影響がないと思われる口側小腸を切離し,口側の断端を横行結腸へ吻合,肛門側の断端を皮下に吊り上げた.術後は全例経口摂取が可能となった.5例中1例で盲端の拡張を呈し,局所麻酔下で吊り上げた盲嚢腸管へのイレウス管挿入・ドレナージ継続を要した.文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.1196