大動脈峡部損傷に対し大動脈ステントグラフト留置を行い,左鎖骨下動脈を閉塞させた1例

症例は32歳の女性。既往にうつ病があり,高所からの墜落にて受傷した。来院時,血圧測定不能のショック状態であった。胸腹部造影CTで大動脈峡部損傷(IIIa),垂直剪断型骨盤骨折(IIIc)を主体とした多発外傷を認めた。胸部大動脈造影を行うと大動脈弓部からは腕頭動脈と左鎖骨下動脈が分岐しており,腕頭動脈から右鎖骨下動脈,右総頸動脈が分岐するとともに左総頸動脈も分岐していた。左椎骨動脈は通常どおり左鎖骨下動脈から分岐していた。胸部仮性動脈瘤は直径30mmで,左鎖骨下動脈分岐直後から下方に突出していたが,造影剤の血管外漏出は認めなかった。左鎖骨下動脈起始から仮性動脈瘤までの距離が短く,ステントグラフト...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 24; no. 4; pp. 225 - 230
Main Authors 伊東, 啓行, 則尾, 弘文, 久城, 正紀, 井上, 泰豪, 大倉, 章生, 前谷, 和秀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2013
Subjects
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.24.225

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Summary:症例は32歳の女性。既往にうつ病があり,高所からの墜落にて受傷した。来院時,血圧測定不能のショック状態であった。胸腹部造影CTで大動脈峡部損傷(IIIa),垂直剪断型骨盤骨折(IIIc)を主体とした多発外傷を認めた。胸部大動脈造影を行うと大動脈弓部からは腕頭動脈と左鎖骨下動脈が分岐しており,腕頭動脈から右鎖骨下動脈,右総頸動脈が分岐するとともに左総頸動脈も分岐していた。左椎骨動脈は通常どおり左鎖骨下動脈から分岐していた。胸部仮性動脈瘤は直径30mmで,左鎖骨下動脈分岐直後から下方に突出していたが,造影剤の血管外漏出は認めなかった。左鎖骨下動脈起始から仮性動脈瘤までの距離が短く,ステントグラフト留置に十分なlanding zoneの確保は困難であったことから左鎖骨下動脈の閉塞が必要と判断し,上行大動脈からの血管造影で両側椎骨動脈の十分な血流を確認した上で,左鎖骨下動脈を閉鎖させる形でステントグラフトを留置した。術後,一過性に左上肢の血流障害を認めたものの,徐々に左右差がないレベルにまで改善した。胸部大動脈損傷に対し大動脈ステントグラフト留置術を行う際,両側椎骨動脈の十分な血流が確認できれば左鎖骨下動脈閉塞を考慮することができると考える。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.24.225