冠動脈起始異常を伴う大動脈弁狭窄症に対する冠動脈バイパス同時施行の弁置換術の1例

冠動脈起始異常は稀であるが,心臓弁手術時においては冠動脈損傷や術中,術後の心筋虚血に起因する合併症を危惧する必要がある.右冠動脈起始異常を有する大動脈弁狭窄症に対し,大動脈弁置換術時に冠動脈バイパス術を同時施行し良好な経過を認めた症例を経験した.症例は72歳女性.労作時の息切れと動悸を自覚するようになり大動脈弁狭窄症と診断された.術前精査にて右冠動脈の起始異常が確認された.右冠動脈は左冠動脈洞より起始しており,大動脈基部と肺動脈主幹部の大血管間を走行し同部での狭窄を認めた.手術は大動脈弁置換術に大伏在静脈を用いた右冠動脈バイパスを同時施行した.体外循環開始前にバイパス末梢吻合を行い,心停止中は...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 46; no. 5; pp. 222 - 225
Main Authors 阿久澤, 聡, 石神, 直之, 鈴木, 一周
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2017
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Summary:冠動脈起始異常は稀であるが,心臓弁手術時においては冠動脈損傷や術中,術後の心筋虚血に起因する合併症を危惧する必要がある.右冠動脈起始異常を有する大動脈弁狭窄症に対し,大動脈弁置換術時に冠動脈バイパス術を同時施行し良好な経過を認めた症例を経験した.症例は72歳女性.労作時の息切れと動悸を自覚するようになり大動脈弁狭窄症と診断された.術前精査にて右冠動脈の起始異常が確認された.右冠動脈は左冠動脈洞より起始しており,大動脈基部と肺動脈主幹部の大血管間を走行し同部での狭窄を認めた.手術は大動脈弁置換術に大伏在静脈を用いた右冠動脈バイパスを同時施行した.体外循環開始前にバイパス末梢吻合を行い,心停止中はバイパスグラフトを利用して心筋保護液を追加注入した.術後経過は順調であり,バイパスグラフトの開存が確認された.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.46.222