自然消退を認めた乳房内結節性筋膜炎の1例

結節性筋膜炎は線維芽細胞の反応性増殖性病変であり,四肢,特に前腕に好発する疾患である.乳房および胸壁に発生する例は稀であるとされている.今回われわれは無治療で自然消退を認めた乳房内の結節性筋膜炎の1例を経験した.74歳の女性が左乳房腫瘤を自覚し当院を受診,左乳房の上外側域に約3cm大の腫瘤を触知した.超音波検査で左乳腺C領域に約3.6cm大の境界不明瞭な低エコー腫瘤を認め,同部位の針生検にて結節性筋膜炎が強く疑われた.しかしながら悪性腫瘍との鑑別が困難であり,確定診断目的にて摘出生検を要するものと考えられた.約1週間後の生検当日,腫瘍は消失しており自然消退が認められた.結節性筋膜炎の治療は診断...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 74; no. 5; pp. 1183 - 1186
Main Authors 川尻, 成美, 若狭, 研一, 小野田, 尚佳, 平川, 弘聖, 柏木, 伸一郎, 高島, 勉, 野田, 諭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2013
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.74.1183

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Summary:結節性筋膜炎は線維芽細胞の反応性増殖性病変であり,四肢,特に前腕に好発する疾患である.乳房および胸壁に発生する例は稀であるとされている.今回われわれは無治療で自然消退を認めた乳房内の結節性筋膜炎の1例を経験した.74歳の女性が左乳房腫瘤を自覚し当院を受診,左乳房の上外側域に約3cm大の腫瘤を触知した.超音波検査で左乳腺C領域に約3.6cm大の境界不明瞭な低エコー腫瘤を認め,同部位の針生検にて結節性筋膜炎が強く疑われた.しかしながら悪性腫瘍との鑑別が困難であり,確定診断目的にて摘出生検を要するものと考えられた.約1週間後の生検当日,腫瘍は消失しており自然消退が認められた.結節性筋膜炎の治療は診断的意義においても腫瘤摘出術が標準であるとされているが,自験例のように自然消退する症例も存在するため,手術適応には十分な配慮が必要であることが示唆された.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.74.1183