経カテーテル的動脈塞栓術施行後に十二指腸狭窄を来した前膵十二指腸動脈瘤破裂の1例

症例は生来健康な56歳の女性。主訴は上腹部痛であった。来院4日前より腹部膨満感および上腹部痛が出現した。来院2日前に上腹部痛が増悪したため前医に救急車で搬送され,入院の上,経過観察されていたが,貧血の進行と腹部CTで後腹膜血腫を認めたため精査加療目的に当院へ転送された。当院来院時のバイタルサインは意識清明,呼吸数20/分,血圧127/71mmHg,脈拍数82/分・整。腹部は平坦・軟で臍上部に強い圧痛を認めたが反跳痛はなかった。血液検査ではHb 8.4g/dlと貧血を認め,腹部dynamic CTでは膵頭部下方に8mm大の内部が均一に造影される境界明瞭な腫瘤影とその周囲の後腹膜腔に広範な血腫を認...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 24; no. 6; pp. 338 - 344
Main Authors 武居, 哲洋, 福島, 紘子, 八木, 啓一, 藤澤, 美智子, 遠藤, 英穂, 高橋, 哲也, 伊藤, 敏孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2013
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.24.338

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Summary:症例は生来健康な56歳の女性。主訴は上腹部痛であった。来院4日前より腹部膨満感および上腹部痛が出現した。来院2日前に上腹部痛が増悪したため前医に救急車で搬送され,入院の上,経過観察されていたが,貧血の進行と腹部CTで後腹膜血腫を認めたため精査加療目的に当院へ転送された。当院来院時のバイタルサインは意識清明,呼吸数20/分,血圧127/71mmHg,脈拍数82/分・整。腹部は平坦・軟で臍上部に強い圧痛を認めたが反跳痛はなかった。血液検査ではHb 8.4g/dlと貧血を認め,腹部dynamic CTでは膵頭部下方に8mm大の内部が均一に造影される境界明瞭な腫瘤影とその周囲の後腹膜腔に広範な血腫を認めた。上腹部痛および後腹膜血腫は腹部内臓動脈瘤破裂が原因と考えられたため緊急血管造影を行った。腹腔動脈造影では起始部に狭窄を認めた。上腸間膜動脈造影では前上膵十二指腸動脈と前下膵十二指腸動脈が膵頭部でアーケードを形成している部分に紡錘状から棍棒状に拡張した動脈瘤を認めた。前上膵十二指腸動脈および前下膵十二指腸動脈から下膵十二指腸動脈にかけてマイクロコイルで塞栓した。第3病日より食事を開始したが第7病日に嘔吐がみられた。腹部造影CT検査を施行したところ拡張した十二指腸球部と増大した後腹膜血腫を認め,上部消化管造影検査では十二指腸は下降脚から水平脚にかけて狭窄していた。後腹膜血腫による圧迫で十二指腸狭窄を来したと考え,経鼻胃管を挿入し血腫の自然消褪を待つこととした。しかし,血腫縮小後も通過障害の改善に乏しかったため第36病日に胃空腸吻合術を施行した。以後経過は良好で,第46病日に退院した。膵十二指腸動脈瘤破裂症例では経カテーテル的動脈塞栓術が奏功しても続発する十二指腸狭窄に注意を払う必要がある。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.24.338