超音波内視鏡下経胃ドレナージが奏効した胃癌術後膵液瘻の1例

胃癌術後膵液瘻は重篤な術後合併症である.今回,胃切除後膵液瘻に伴う腹腔内膿瘍に対し超音波内視鏡下経胃ドレナージを行った1例を経験したので報告する.症例は67歳,女性.胃癌(cT2N0M0,cStage I)に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.術後第4病日に38.6度の発熱と背部痛を認め,造影CTを施行したところ,膵の腫大と周囲の脂肪織濃度の上昇,輸入脚周囲の液体貯留を認めた.保存的加療にて症状は軽快せず,保存的加療開始28日目に造影CTを施行すると,貯留していた液体は被包化され膿瘍を形成していた.体表との間に介在する腸管により経皮的なドレナージは極めて困難であったが,膿瘍壁と胃壁が接して...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 6; pp. 1097 - 1103
Main Authors 石林, 健一, 辻, 敏克, 山本, 大輔, 北村, 祥貴, 角谷, 慎一, 伴登, 宏行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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Summary:胃癌術後膵液瘻は重篤な術後合併症である.今回,胃切除後膵液瘻に伴う腹腔内膿瘍に対し超音波内視鏡下経胃ドレナージを行った1例を経験したので報告する.症例は67歳,女性.胃癌(cT2N0M0,cStage I)に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.術後第4病日に38.6度の発熱と背部痛を認め,造影CTを施行したところ,膵の腫大と周囲の脂肪織濃度の上昇,輸入脚周囲の液体貯留を認めた.保存的加療にて症状は軽快せず,保存的加療開始28日目に造影CTを施行すると,貯留していた液体は被包化され膿瘍を形成していた.体表との間に介在する腸管により経皮的なドレナージは極めて困難であったが,膿瘍壁と胃壁が接していたため超音波内視鏡下経胃ドレナージ術を施行した.解熱と膿瘍の著明な縮小を認め,その後経過は良好である.自験例のように嚢胞壁と消化管壁が接している術後膵液瘻では,超音波内視鏡下経胃ドレナージは有効な治療法の一つと考えられる.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.1097