Spiral cuff 法を応用して冠動脈再建を行った左冠動脈肺動脈起始症の乳児例

症例は月齢6の女児で,診断は左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)である.5ヵ月時に発熱を主訴に近医を受診した際に酸素化不良を指摘された.当院小児科に搬送され,挿管呼吸管理が開始された.心臓超音波検査で肺動脈弁左側の交連部直上に左冠動脈起始部を認めた.左室駆出率は9%であり,moderateの僧帽弁逆流が認められた.心臓カテーテル検査では,右冠動脈造影で側副血行路を介して左冠動脈が造影された.内科的治療により全身状態は改善し,入院21日目に冠動脈再建を行った.その際,肺動脈弁交連部を削ぎ落し,左冠動脈開口部周囲の縫い代を確保してspiral cuffを作製した.体外式膜型人工肺を用いた補助循環(...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 49; no. 6; pp. 325 - 329
Main Authors 大徳, 和之, 小渡, 亮介, 福田, 幾夫, 佐々木, 花恵, 鈴木, 保之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.11.2020
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.49.325

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Summary:症例は月齢6の女児で,診断は左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)である.5ヵ月時に発熱を主訴に近医を受診した際に酸素化不良を指摘された.当院小児科に搬送され,挿管呼吸管理が開始された.心臓超音波検査で肺動脈弁左側の交連部直上に左冠動脈起始部を認めた.左室駆出率は9%であり,moderateの僧帽弁逆流が認められた.心臓カテーテル検査では,右冠動脈造影で側副血行路を介して左冠動脈が造影された.内科的治療により全身状態は改善し,入院21日目に冠動脈再建を行った.その際,肺動脈弁交連部を削ぎ落し,左冠動脈開口部周囲の縫い代を確保してspiral cuffを作製した.体外式膜型人工肺を用いた補助循環(VA-ECMO)下で手術を終了した.術後5日でVA-ECMOから離脱し,術後18日目に抜管され,術後3ヵ月で退院した.術後1年の現在,左室駆出率は30%,僧帽弁逆流はmild,肺動脈弁逆流はmildで推移し,経過は良好である.低左心機能の乳児ALCAPAに対する外科治療の報告は少なく,術後補助循環法も含めた周術期戦略の構築が,重症例の治療成績向上のため重要と考えられた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.49.325