広範囲胸部大動脈瘤に対する long elephant trunk を用いた弓部大動脈置換術後に胸部下行大動脈瘤の急速拡大と DIC を来たした1例

症例は74歳女性.嚥下困難を主訴に当院を受診し,造影CTにて広範囲胸部大動脈瘤を指摘された.嚥下障害の原因は,胸部下行大動脈瘤(最大径49 mm)による食道圧排であった.Two-stage repairの方針とし,第1回目手術として大動脈基部・上行・弓部大動脈置換術(long elephant trunk使用)を先行し,第2回目手術として胸部下行大動脈置換術を施行する予定とした.第1回目手術を完了した時点で,予期せず嚥下障害の改善が得られた.この時点で胸部下行大動脈瘤は最大径49 mmであり無症状であるため,早急な手術を要する状況ではなく経過観察の猶予があると判断した.第2回目手術(下行大動脈...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 46; no. 3; pp. 130 - 133
Main Authors 森嶋, 素子, 丸山, 雄二, 吉尾, 敬秀, 新田, 隆, 高橋, 賢一朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2017
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.46.130

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Summary:症例は74歳女性.嚥下困難を主訴に当院を受診し,造影CTにて広範囲胸部大動脈瘤を指摘された.嚥下障害の原因は,胸部下行大動脈瘤(最大径49 mm)による食道圧排であった.Two-stage repairの方針とし,第1回目手術として大動脈基部・上行・弓部大動脈置換術(long elephant trunk使用)を先行し,第2回目手術として胸部下行大動脈置換術を施行する予定とした.第1回目手術を完了した時点で,予期せず嚥下障害の改善が得られた.この時点で胸部下行大動脈瘤は最大径49 mmであり無症状であるため,早急な手術を要する状況ではなく経過観察の猶予があると判断した.第2回目手術(下行大動脈置換術)はいったん保留とし,退院とした.外来経過観察していたところ,第1回目手術の1年後,急な嚥下障害再発と左臀部腫脹が生じ,緊急入院となった.精査の結果,残存する胸部下行大動脈瘤の急速拡大(最大径 62 mm)を認め,さらにaneurysm-induced DICが臀部筋層内出血を惹起していた.緊急TEVARを施行し,胸部下行大動脈瘤の血栓化が得られた後は,DICを脱し嚥下障害の改善が得られ,自宅退院に至った.今回われわれはlong elephant trunkに付随する稀有な事例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.46.130