ボールペンによる経口腔的トルコ鞍穿通外傷の例

銃弾やナイフ以外の頭蓋内穿通外傷は稀な疾患である。経口腔的にボールペンを刺入し,トルコ鞍から頭蓋内へと穿通した一例を経験したので報告する。症例は57歳男性で,統合失調症で他院に入院していた。自殺を企図し,歯ブラシやボールペンを口腔内に突き刺しているのが目撃された。その後の患者の様子は変わらなかったが,CT検査にてトルコ鞍骨折と気脳症,さらに蝶形骨洞にらせん状の金属異物を指摘され当院脳神経外科に転院搬送となった。同日より抗菌薬の投与が開始され,入院2日目に当科への診察依頼があった。診察時は硬口蓋から軟口蓋にかけての粘膜裂傷と,左鼻腔内にスプリングを認めた。意識状態は受傷前と変化なく,神経学的異常...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 58; no. 2; pp. 175 - 179
Main Authors 堀切, 教平, 山村, 晃司, 北原, 伸郎, 古川, 麻世, 安原, 一夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2019
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:銃弾やナイフ以外の頭蓋内穿通外傷は稀な疾患である。経口腔的にボールペンを刺入し,トルコ鞍から頭蓋内へと穿通した一例を経験したので報告する。症例は57歳男性で,統合失調症で他院に入院していた。自殺を企図し,歯ブラシやボールペンを口腔内に突き刺しているのが目撃された。その後の患者の様子は変わらなかったが,CT検査にてトルコ鞍骨折と気脳症,さらに蝶形骨洞にらせん状の金属異物を指摘され当院脳神経外科に転院搬送となった。同日より抗菌薬の投与が開始され,入院2日目に当科への診察依頼があった。診察時は硬口蓋から軟口蓋にかけての粘膜裂傷と,左鼻腔内にスプリングを認めた。意識状態は受傷前と変化なく,神経学的異常所見や眼球運動障害,鼻漏,頭痛といった症状はみられなかった。鼻腔内のスプリングを除去したが髄液の漏出はなかった。当院で施行したCTでは左蝶形骨洞に円筒状の高吸収域を認め,口金の蝶形骨洞内遺残が考えられた。感染源となり得るため,全身麻酔下で異物除去術を施行した。術後は大きな合併症なく搬送元に転院となった。頭蓋内へは,眼窩,鼻腔といった比較的骨の薄い箇所は穿通しやすい。受傷後に軽微な症状で経過していても,髄膜炎や脳膿瘍といった合併症を併発し予後不良となることもある。十分な画像精査と慎重な経過観察は不可欠であり,遺残のないことも確認することが重要である。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.58.175