亜急性期特発性後腹膜血腫の1例

症例は68歳,女性.右下腹部の鈍痛を主訴として近医より紹介入院となった.手術や外傷の既往はなく,血液検査も明らかな異常はなかった.エコー,CT,MRI検査の所見から被膜を伴った特発性後腹膜血腫を疑ったが鑑別診断として,後腹膜嚢胞や嚢胞変性を伴った傍神経節腫,神経原性腫瘍,筋原性腫瘍などの腫瘍性病変の可能性が否定できなかった.平成20年3月下旬(発症後約6週)に,確定診断と治療を目的として後腹膜腫瘤摘出術を行った.術後診断は,特発性後腹膜血腫であった.画像診断では,MRI検査が血腫の経時的変化をとらえた特徴的な所見を示していた.過去の報告例を含めて検討したところ,被膜を伴った特発性後腹膜血腫は,...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 74; no. 5; pp. 1397 - 1403
Main Authors 坂本, 良平, 佐藤, 雅之, 山下, 裕一, 冨田, 昌良, 吉岡, 晋吾, 橋本, 恭弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2013
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.74.1397

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Summary:症例は68歳,女性.右下腹部の鈍痛を主訴として近医より紹介入院となった.手術や外傷の既往はなく,血液検査も明らかな異常はなかった.エコー,CT,MRI検査の所見から被膜を伴った特発性後腹膜血腫を疑ったが鑑別診断として,後腹膜嚢胞や嚢胞変性を伴った傍神経節腫,神経原性腫瘍,筋原性腫瘍などの腫瘍性病変の可能性が否定できなかった.平成20年3月下旬(発症後約6週)に,確定診断と治療を目的として後腹膜腫瘤摘出術を行った.術後診断は,特発性後腹膜血腫であった.画像診断では,MRI検査が血腫の経時的変化をとらえた特徴的な所見を示していた.過去の報告例を含めて検討したところ,被膜を伴った特発性後腹膜血腫は,摘出術によってその診断を確定したものが多かった.すなわち特発性後腹膜血腫では,術前に確定診断を得ることが困難な場合もあるが,MRIによる鑑別診断の有用性が示唆された.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.74.1397