腹会陰式直腸切断術後に発症した,小腸嵌頓によるイレウスの1例

症例は58歳男性。直腸癌の診断にて腹会陰式直腸切断術(以下,Miles手術)を施行した。術後3日目より経口摂取を開始したが,術後6日夜より心窩部痛と嘔気が出現した。腹部単純X線検査にて,腸閉塞と診断し,イレウス管を挿入した。しかし,改善傾向を認めなかったため,術後10日目に腹部単純CT検査を行った。骨盤底部に落ち込んだ小腸を疑わせる径4cm大のSpace Occupied Lesion(SOL)を認めた。イレウス管からの排液は減少せず,人工肛門からの排ガス・排便がないことなどから,術後11日目に再手術を行った。術中所見では,骨盤底腹膜縫合部の一部が裂け,同部に回腸末端部が約10cmにわたって嵌...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 32; no. 6; pp. 1093 - 1096
Main Authors 安, 炳九, 橋本, 京三, 遠藤, 善裕, 水黒, 知行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2012
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.32.1093

Cover

More Information
Summary:症例は58歳男性。直腸癌の診断にて腹会陰式直腸切断術(以下,Miles手術)を施行した。術後3日目より経口摂取を開始したが,術後6日夜より心窩部痛と嘔気が出現した。腹部単純X線検査にて,腸閉塞と診断し,イレウス管を挿入した。しかし,改善傾向を認めなかったため,術後10日目に腹部単純CT検査を行った。骨盤底部に落ち込んだ小腸を疑わせる径4cm大のSpace Occupied Lesion(SOL)を認めた。イレウス管からの排液は減少せず,人工肛門からの排ガス・排便がないことなどから,術後11日目に再手術を行った。術中所見では,骨盤底腹膜縫合部の一部が裂け,同部に回腸末端部が約10cmにわたって嵌頓しており,これがイレウスの原因と断定した。嵌頓を整復した後,小腸壁に壊死のないことを確認し,温存した。骨盤底腹膜修復を行い,手術を終了した。2回目の手術後4日目より経口摂取を開始し,患者は現在,外来通院中である。以後,当院ではこのようなイレウスの再発を防止するため,後腹膜の切離や組織の強度に十分注意を払うことにしている。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.32.1093