乳糜腹水を合併した小腸軸捻の1例

症例は64歳,男性.既往歴として25年前に胃癌の診断で幽門側胃切除術を施行されていた.平成24年4月,夕食後に突然の下腹部痛が出現し当院救急外来へ搬送された.触診で腹部全体に腹膜刺激徴候があり,腹部骨盤単純CTで拡張小腸とwhirl like signを認め,絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行した.開腹時白色混濁した腹水を認め,小腸間膜にもリンパ管と思われる微細な白色線状の構造物を多数認めた.小腸は小腸間膜の上腸間膜動脈根部周囲の癒着を軸に360度捻転していたため,癒着を剥離し,捻転を解除した.捻転腸管に血流障害は認めなかった.腹水は乳白色で腹水中トリグリセリド値が363mg/dLと高値...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 74; no. 5; pp. 1281 - 1285
Main Authors 島, 秀栄, 久保, 章, 杉浦, 浩朗, 関澤, 健太郎, 亀田, 久仁郎, 清水, 康博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2013
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.74.1281

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Summary:症例は64歳,男性.既往歴として25年前に胃癌の診断で幽門側胃切除術を施行されていた.平成24年4月,夕食後に突然の下腹部痛が出現し当院救急外来へ搬送された.触診で腹部全体に腹膜刺激徴候があり,腹部骨盤単純CTで拡張小腸とwhirl like signを認め,絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行した.開腹時白色混濁した腹水を認め,小腸間膜にもリンパ管と思われる微細な白色線状の構造物を多数認めた.小腸は小腸間膜の上腸間膜動脈根部周囲の癒着を軸に360度捻転していたため,癒着を剥離し,捻転を解除した.捻転腸管に血流障害は認めなかった.腹水は乳白色で腹水中トリグリセリド値が363mg/dLと高値であったため乳糜腹水と診断した.術後経過は良好で,術後第7病日に退院となった.乳糜腹水を呈する絞扼性イレウスの報告は本邦で本症例を含めこれまで12例のみである.文献的考察を加え,これを報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.74.1281