原発巣の局所進展が腸管壊死の一因となり得た閉塞性S状結腸癌の1例

症例は84歳男性。数日前に前医で大腸内視鏡検査を受けS状結腸癌と診断された。腹痛と嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した。腹部全体に圧痛,筋性防御を認め,血液生化学検査はWBC 16,690/μL,CRP 1.12mg/dLであった。腹部CT検査ではS状結腸に全周性壁肥厚と口側腸管拡張を呈した。また腫瘍から連続しS状結腸動脈沿いを中枢側にむかう不整な高吸収域を認め,腫瘍の局所進展と考えられた。閉塞性S状結腸癌の診断で緊急開腹手術を行った。S状結腸に腫瘍を触知し,口側腸管は30cm長の連続する黒色壊死所見を呈した。壊死腸管を含むS状結腸を切除し,単孔式人工肛門を造設した。摘出標本では,腫瘍中心を境界...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 38; no. 6; pp. 1043 - 1046
Main Authors 前多, 松喜, 神谷, 忠宏, 前田, 周良, 加藤, 岳人, 青葉, 太郎, 平松, 和洋, 柴田, 佳久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.09.2018
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.38.1043

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Summary:症例は84歳男性。数日前に前医で大腸内視鏡検査を受けS状結腸癌と診断された。腹痛と嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した。腹部全体に圧痛,筋性防御を認め,血液生化学検査はWBC 16,690/μL,CRP 1.12mg/dLであった。腹部CT検査ではS状結腸に全周性壁肥厚と口側腸管拡張を呈した。また腫瘍から連続しS状結腸動脈沿いを中枢側にむかう不整な高吸収域を認め,腫瘍の局所進展と考えられた。閉塞性S状結腸癌の診断で緊急開腹手術を行った。S状結腸に腫瘍を触知し,口側腸管は30cm長の連続する黒色壊死所見を呈した。壊死腸管を含むS状結腸を切除し,単孔式人工肛門を造設した。摘出標本では,腫瘍中心を境界として口側結腸粘膜の黒色変化を認めた。原発巣の局所進展が腸管壊死の一因として考えられた閉塞性大腸癌の報告は過去になく,貴重な症例と考えられ文献的考察を加え報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.38.1043