鈍的外傷により孤立性上腸間膜動脈解離を来した1例
大動脈解離を伴わない孤立性上腸間膜動脈(SMA)解離は腸管虚血を来す血管病変であるが,通常は特発性に発症し,外傷による発症は極めて稀である。我々は鈍的外傷を契機に孤立性SMA解離を発症した症例を経験した。症例は71歳の女性。原付バイクで走行中に乗用車と接触後,転倒して受傷し,救急搬送された。来院時バイタルサインは,Glasgow coma scale 10点,血圧150/80mmHg,脈拍106/分,呼吸数18/分で,体温37.2℃であった。頭部CTにて急性硬膜下血腫・脳挫傷を認め,腹部造影CTにて孤立性SMA解離(Sakamotoらによる分類上type II)を認めた。頭部外傷に対して緊急で...
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Published in | 日本救急医学会雑誌 Vol. 25; no. 9; pp. 723 - 728 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本救急医学会
2014
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Subjects | |
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ISSN | 0915-924X 1883-3772 |
DOI | 10.3893/jjaam.25.723 |
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Summary: | 大動脈解離を伴わない孤立性上腸間膜動脈(SMA)解離は腸管虚血を来す血管病変であるが,通常は特発性に発症し,外傷による発症は極めて稀である。我々は鈍的外傷を契機に孤立性SMA解離を発症した症例を経験した。症例は71歳の女性。原付バイクで走行中に乗用車と接触後,転倒して受傷し,救急搬送された。来院時バイタルサインは,Glasgow coma scale 10点,血圧150/80mmHg,脈拍106/分,呼吸数18/分で,体温37.2℃であった。頭部CTにて急性硬膜下血腫・脳挫傷を認め,腹部造影CTにて孤立性SMA解離(Sakamotoらによる分類上type II)を認めた。頭部外傷に対して緊急で開頭血腫除去術・外減圧術を施行した。SMA解離に対しては,CT所見で腸管虚血が明らかではなかったため,保存的治療を選択した。頭部外傷の存在を考慮し抗凝固療法は行わなかった。第4 病日に腹部膨満を認め,造影CTでSMAの完全閉塞と小腸壁内気腫を認めた。腸管虚血を疑い緊急開腹手術を施行したところ,小腸はTreiz靱帯から30cmを起点として210cmに渡って壊死していた。壊死した小腸の切除を行い,残存小腸は60cmであった。最終Glasgow outcome scaleは3で,第72病日に転院した。孤立性SMA解離は保存的治療が成功した報告が多いが,腸管虚血を来した場合には侵襲的な治療が必要となる。その判断には造影CT所見および自覚症状が重要だが,本症例では合併した頭部外傷による意識障害のため,自覚症状からの判断は困難であった。閉塞の危険性が高い病型ではフォローアップの造影CTを早めに行いSMAの血流を評価するとともに時期を逸することなく血管内治療なども考慮する必要があると考えられた。 |
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ISSN: | 0915-924X 1883-3772 |
DOI: | 10.3893/jjaam.25.723 |