コンピュータシミュレーションによる蝸牛振動の可視化 基底板上における歪成分耳音響放射の解析

要旨: 蝸牛機能の解明には基底板振動と有毛細胞の働きを十分理解することが重要であるが, 生理的環境下における蝸牛振動の直接計測は簡単ではなく, 特にヒトを対象とした計測は困難である。そこで我々は, 蝸牛の数値解析モデルを構築し, 基底板の振動様式の可視化や蝸牛疾患による基底板振動変化について解析を行っている。本稿では, 基底板上で外有毛細胞 (OHC) の能動性を部分的に欠如させたモデルを用いて, 基底板上の各部およびアブミ骨に誘発される歪成分を計算し, 歪成分耳音響放射 (DPOAE) と OHC の能動性との関係を検討した。その結果, 刺激音周波数 f2 を特徴周波数に持つ基底板の位置より...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 61; no. 6; pp. 525 - 530
Main Authors 李, 信英, 小池, 卓二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 28.12.2018
日本聴覚医学会
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ISSN0303-8106
1883-7301
DOI10.4295/audiology.61.525

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Summary:要旨: 蝸牛機能の解明には基底板振動と有毛細胞の働きを十分理解することが重要であるが, 生理的環境下における蝸牛振動の直接計測は簡単ではなく, 特にヒトを対象とした計測は困難である。そこで我々は, 蝸牛の数値解析モデルを構築し, 基底板の振動様式の可視化や蝸牛疾患による基底板振動変化について解析を行っている。本稿では, 基底板上で外有毛細胞 (OHC) の能動性を部分的に欠如させたモデルを用いて, 基底板上の各部およびアブミ骨に誘発される歪成分を計算し, 歪成分耳音響放射 (DPOAE) と OHC の能動性との関係を検討した。その結果, 刺激音周波数 f2 を特徴周波数に持つ基底板の位置よりも基部側に存在する OHC の能動性が, DPOAE 生成に重要な役割を果たしていることが示唆された。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.61.525