スタンバーグ記憶課題に基づく文字の図形および音韻的照合時におけるアルファ波の事象関連脱同期

【要旨】本研究ではひらがなとカタカナを用いたスタンバーグ記憶課題遂行中の記憶照合に伴う脳活動を脳波α帯活動の同期/脱同期とα帯活動抑制時間に基づき検討した。実験では文字の発音が同じであってもひらがなとカタカナの区別をする図形的照合(GI)条件と読みが同じであればそれらを区別しない音韻的照合(PI)条件を設定した。両条件とも記憶する文字数1/3/5文字の3条件を設定した。全脳領域を対象とする128チャンネルより課題遂行中の脳波を記録し、テスト刺激呈示後の記憶照合期間のα帯活動を解析した。その結果、頭頂-後頭領域優勢にα帯活動抑制が観察された。この抑制からの回復にかかるα帯活動抑制時間は、GI条件...

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Published in認知神経科学 Vol. 16; no. 3+4; pp. 215 - 224
Main Authors 久保, 佑樹, 小林, 哲生, 奥畑, 志帆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 認知神経科学会 2015
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ISSN1344-4298
1884-510X
DOI10.11253/ninchishinkeikagaku.16.215

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Summary:【要旨】本研究ではひらがなとカタカナを用いたスタンバーグ記憶課題遂行中の記憶照合に伴う脳活動を脳波α帯活動の同期/脱同期とα帯活動抑制時間に基づき検討した。実験では文字の発音が同じであってもひらがなとカタカナの区別をする図形的照合(GI)条件と読みが同じであればそれらを区別しない音韻的照合(PI)条件を設定した。両条件とも記憶する文字数1/3/5文字の3条件を設定した。全脳領域を対象とする128チャンネルより課題遂行中の脳波を記録し、テスト刺激呈示後の記憶照合期間のα帯活動を解析した。その結果、頭頂-後頭領域優勢にα帯活動抑制が観察された。この抑制からの回復にかかるα帯活動抑制時間は、GI条件ではメモリセットサイズが増加するにともない延長したがPI条件ではそのような傾向はみとめられなかった。GI条件では後頭・頭頂・左右中央領域においてα帯活動抑制時間と反応時間の間の正の相関が有意であり、記憶負荷に応じた抑制時間の延長を報告した先行研究と一致した。一方、PI条件ではその相関は有意ではなかった。この結果から、α帯活動抑制時間はGI条件において記憶照合にかかる時間を反映するものの、その領域特異性については明らかにされなかった。反応時間の結果から、音韻的照合と図形的照合を相互に採用する条件であっても、系列的・網羅的な記憶照合がなされていることが分かった。今後はEEG信号の発生源に着目した検討により、記憶照合にかかる時間と記憶負荷との相関の高い脳領域の特定が可能になると考えられる。
ISSN:1344-4298
1884-510X
DOI:10.11253/ninchishinkeikagaku.16.215