重度の嚥下障害を呈した Wallenberg 症候群患者の筋電図所見

Wallenberg 症候群による嚥下障害では、延髄の CPG (central pattern generator) および下部脳神経核の障害が原因とされているが、それらが関与する神経機構が十分に解明されているわけではない。われわれは、Wallenberg 症候群患者の嚥下関連筋の筋活動および動態を評価する目的で、筋電図検査 (EMG) および嚥下造影検査 (VF) を施行した。対象は、発症から 3 カ月以上経過し、嚥下訓練を行っても経口摂取が困難な Wallenberg 症候群患者 11 名とした。嚥下動作時の咬筋、舌骨上筋群、舌骨下筋群の運動点直上の表面筋電図、輪状咽頭筋の針筋電図を同時...

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Published injibi to rinsho Vol. 55; no. Suppl.2; pp. S158 - S163
Main Authors 畠, 二郎, 佐藤, 新介, 青柳, 陽一郎, 山口, 若水, 椿原, 彰夫, 嘉村, 雄飛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻と臨床会 2009
JIBI TO RINSHO KAI
Subjects
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ISSN0447-7227
2185-1034
DOI10.11334/jibi.55.S158

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Summary:Wallenberg 症候群による嚥下障害では、延髄の CPG (central pattern generator) および下部脳神経核の障害が原因とされているが、それらが関与する神経機構が十分に解明されているわけではない。われわれは、Wallenberg 症候群患者の嚥下関連筋の筋活動および動態を評価する目的で、筋電図検査 (EMG) および嚥下造影検査 (VF) を施行した。対象は、発症から 3 カ月以上経過し、嚥下訓練を行っても経口摂取が困難な Wallenberg 症候群患者 11 名とした。嚥下動作時の咬筋、舌骨上筋群、舌骨下筋群の運動点直上の表面筋電図、輪状咽頭筋の針筋電図を同時記録した。結果、VF にて全例で食道入口部での通過障害を認めた。筋電図では、11 例中 10 例で舌骨筋群の収縮から輪状咽頭筋の弛緩という一連の協調的かつ連続的な筋活動が障害されていた。嚥下時の輪状咽頭筋筋電図は、 ( 1 )完全弛緩、 ( 2 ) 不完全弛緩、 ( 3 ) 弛緩不能に分類可能であった。完全弛緩例は 20%未満で、不完全弛緩もしくは弛緩不能が 80%以上を占めた。以上より、Wallenberg 症候群における通過障害は、輪状咽頭筋弛緩不全に加えて、嚥下関連筋の協調的かつ連続的な筋活動の障害、すなわち協調運動不全による通過障害が深く関与していると考えられた。
ISSN:0447-7227
2185-1034
DOI:10.11334/jibi.55.S158