膵転移結腸穿通部からの消化管出血に対し外科治療を行った再発乳癌の1例

症例は55歳,女性.主訴は下血.42歳から右乳癌に対して加療中であった.約4年前,膵体部に乳癌転移巣を指摘され,化学療法(weekly paclitaxel+bevacizumab)を施行されていた.大量の下血を認めて救急受診し入院となった.入院時,低血圧と血液検査で炎症反応と軽度の貧血を認めた.腹部造影CTで膵尾部に60mm大の内部に血腫を伴う転移巣を認めた.また,横行結腸への浸潤が疑われ,同部位から肛門側の結腸内にも血腫を認めた.乳癌膵転移巣の結腸穿通と腫瘍内出血が下血の原因であると考えられた.入院後,下血が持続したため,緊急血管造影検査を行い出血源である脾動脈にコイル塞栓を施行した.一旦...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 4; pp. 664 - 667
Main Authors 宮崎, 敬太, 木村, 泰生, 浅利, 貞毅, 藤田, 博文, 荻野, 和功
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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Summary:症例は55歳,女性.主訴は下血.42歳から右乳癌に対して加療中であった.約4年前,膵体部に乳癌転移巣を指摘され,化学療法(weekly paclitaxel+bevacizumab)を施行されていた.大量の下血を認めて救急受診し入院となった.入院時,低血圧と血液検査で炎症反応と軽度の貧血を認めた.腹部造影CTで膵尾部に60mm大の内部に血腫を伴う転移巣を認めた.また,横行結腸への浸潤が疑われ,同部位から肛門側の結腸内にも血腫を認めた.乳癌膵転移巣の結腸穿通と腫瘍内出血が下血の原因であると考えられた.入院後,下血が持続したため,緊急血管造影検査を行い出血源である脾動脈にコイル塞栓を施行した.一旦症状は軽快したが,再度大量下血による出血性ショックをきたしたため,膵体尾部切除,脾横行結腸合併切除および人工肛門造設を行い救命しえた.乳癌膵転移巣が生命を脅かすことは極めて稀であり,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.664