Non-lifting sign判定の局所注射によって消失したS状結腸癌の1例
症例は63歳の女性.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に20mm大の0-Isp病変を認め,内視鏡的粘膜切除術のために腫瘍直下にエピネフリン・インジゴカルミン加グリセオールの局所注射を行ったところnon-lifting signを認めた.外科的切除の適応と判断し腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行したが,切除標本では潰瘍瘢痕を認めるのみで病理組織学的に癌を認めず,消失したものと考えられた.消失の機序として局所注射による腫瘍と正常組織の離開やエピネフリンの薬理作用である血管収縮による腫瘍の阻血により,結果として壊死,脱落,潰瘍形成後,瘢痕をきたした可能性が考えられた.術前に本症例と同様に内視鏡処置が行われ...
Saved in:
Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 80; no. 2; pp. 368 - 372 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
2019
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
DOI | 10.3919/jjsa.80.368 |
Cover
Summary: | 症例は63歳の女性.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に20mm大の0-Isp病変を認め,内視鏡的粘膜切除術のために腫瘍直下にエピネフリン・インジゴカルミン加グリセオールの局所注射を行ったところnon-lifting signを認めた.外科的切除の適応と判断し腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行したが,切除標本では潰瘍瘢痕を認めるのみで病理組織学的に癌を認めず,消失したものと考えられた.消失の機序として局所注射による腫瘍と正常組織の離開やエピネフリンの薬理作用である血管収縮による腫瘍の阻血により,結果として壊死,脱落,潰瘍形成後,瘢痕をきたした可能性が考えられた.術前に本症例と同様に内視鏡処置が行われた場合は,病変部の消失が起こり得ることを念頭に置いて外科手術を行う必要があると考えられた. |
---|---|
ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.80.368 |