結核性腹膜炎後に2回の完全腹腔鏡下肝切除術を施行した肝細胞癌の1例

症例は60歳の男性で,C型慢性肝炎にて経過観察中であった.腹部造影CTで肝S4に10mm大腫瘤を認め,肝細胞癌と診断されたため当科へ紹介となった.結核性胸腹膜炎の既往があり腹腔内全体の癒着が想定されたが,肝表面の単発病変であったため,腹腔鏡下肝S4部分切除術を施行した.肝周囲から臍下まで癒着を認めたが,腹腔鏡下に剥離して手術を行い,合併症なく術後7日目に退院となった.8カ月後,肝S7領域,右横隔膜下に新たな12mm大肝細胞癌が出現した.今回も肝表面の小病変であり前回肝切除部から離れていたため,腹腔鏡下肝S7部分切除を施行した.肝切除後の癒着は高度であったが,同部位の剥離は最小限とすることで安全...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 2; pp. 312 - 316
Main Authors 高木, 忠隆, 高, 済峯, 松本, 弥生, 向川, 智英, 石川, 博文, 渡辺, 明彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.81.312

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Summary:症例は60歳の男性で,C型慢性肝炎にて経過観察中であった.腹部造影CTで肝S4に10mm大腫瘤を認め,肝細胞癌と診断されたため当科へ紹介となった.結核性胸腹膜炎の既往があり腹腔内全体の癒着が想定されたが,肝表面の単発病変であったため,腹腔鏡下肝S4部分切除術を施行した.肝周囲から臍下まで癒着を認めたが,腹腔鏡下に剥離して手術を行い,合併症なく術後7日目に退院となった.8カ月後,肝S7領域,右横隔膜下に新たな12mm大肝細胞癌が出現した.今回も肝表面の小病変であり前回肝切除部から離れていたため,腹腔鏡下肝S7部分切除を施行した.肝切除後の癒着は高度であったが,同部位の剥離は最小限とすることで安全に手術を行えた.合併症なく術後9日目に退院した.初回手術より1年9カ月を経過した現在,無再発生存中である.結核性腹膜炎による癒着症例において,安全に2回の腹腔鏡下肝切除術を施行することができた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.312