外傷によりヘルニア嚢内大腸穿孔をきたした左鼠径ヘルニアの1例

患者は76歳,男性.2トン漁船に乗船中に10トンの船舶と衝突して受傷した.来院時,血圧低下ならびに呼吸促迫,左会陰部に2cm程度の裂傷を認めた.また,胸部痛・両臀部痛を認めた.左鼠径部には軟らかい腫瘤を触知した.全身造影CT検査を施行し,右血気胸,右多発肋骨骨折,多発骨盤骨折,被膜下肝損傷,腹腔内free air,左鼠径ヘルニアを認めた.また,左臀部~腹部にかけて造影剤の血管外流出を認めた.以上より,骨盤骨折・外傷性腸管損傷と診断し血管塞栓術と右胸腔ドレナージ施行後,緊急手術を施行した.手術所見では,腹腔内ならびに左ヘルニア嚢内は便汁で汚染され,断裂したS状結腸を認めた.腹腔内を洗浄し,S状結...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 76; no. 2; pp. 413 - 417
Main Authors 今岡, 祐輝, 池田, 聡, 板本, 敏行, 漆原, 貴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2015
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.76.413

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Summary:患者は76歳,男性.2トン漁船に乗船中に10トンの船舶と衝突して受傷した.来院時,血圧低下ならびに呼吸促迫,左会陰部に2cm程度の裂傷を認めた.また,胸部痛・両臀部痛を認めた.左鼠径部には軟らかい腫瘤を触知した.全身造影CT検査を施行し,右血気胸,右多発肋骨骨折,多発骨盤骨折,被膜下肝損傷,腹腔内free air,左鼠径ヘルニアを認めた.また,左臀部~腹部にかけて造影剤の血管外流出を認めた.以上より,骨盤骨折・外傷性腸管損傷と診断し血管塞栓術と右胸腔ドレナージ施行後,緊急手術を施行した.手術所見では,腹腔内ならびに左ヘルニア嚢内は便汁で汚染され,断裂したS状結腸を認めた.腹腔内を洗浄し,S状結腸を部分切除し,腸管吻合を行った.内鼠径輪は腹腔内より単純閉鎖し,会陰部裂傷よりドレーンをヘルニア嚢内に留置した.鼠径ヘルニア内の外傷性S状結腸断裂は非常に稀であるため,文献的な考察を踏まえ報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.76.413