聖マリアンナ医科大学における褐色細胞腫の手術症例に対する臨床的検討 腹腔鏡下副腎摘除症例を中心に

【目的】 褐色細胞腫の手術症例について,他の副腎腫瘍と比較し臨床的検討を行った。 【対象と方法】 2010年4月から2015年8月までに当科で手術を行った副腎腫瘍57症例を対象とした。17例の褐色細胞腫症例と他の副腎腫瘍症例40例の二群に分け,性別,手術術式,腫瘍径などを比較検討した。また,腹腔鏡下手術を行った症例に限定し,褐色細胞腫症例と,他の副腎腫瘍症例に分け,手術時間,出血量,入院期間等に関して比較検討した。さらに褐色細胞腫症全例において術直後から昇圧剤を必要とした群と,必要としなかった群に分け術前の各種カテコラミン値を比較した。 【結果】 褐色細胞腫例の平均年齢は53.4歳,男性9例,...

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Published in聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 44; no. 3; pp. 109 - 115
Main Authors 薄場, 渉, 北島, 和樹, 目時, 彰弘, 工藤, 浩也, 西, 智弘, 蜂須賀, 智, 力石, 辰也, 勝岡, 由一, 佐藤, 雄一, 佐々木, 秀郎, 吉江, 秀和, 相田, 絋一朗, 中澤, 龍斗, 佐藤, 佳嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会 2016
聖マリアンナ医科大学医学会
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ISSN0387-2289
2189-0285
DOI10.14963/stmari.44.109

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Summary:【目的】 褐色細胞腫の手術症例について,他の副腎腫瘍と比較し臨床的検討を行った。 【対象と方法】 2010年4月から2015年8月までに当科で手術を行った副腎腫瘍57症例を対象とした。17例の褐色細胞腫症例と他の副腎腫瘍症例40例の二群に分け,性別,手術術式,腫瘍径などを比較検討した。また,腹腔鏡下手術を行った症例に限定し,褐色細胞腫症例と,他の副腎腫瘍症例に分け,手術時間,出血量,入院期間等に関して比較検討した。さらに褐色細胞腫症全例において術直後から昇圧剤を必要とした群と,必要としなかった群に分け術前の各種カテコラミン値を比較した。 【結果】 褐色細胞腫例の平均年齢は53.4歳,男性9例,女性8例であった。腫瘍径の平均値は4.03 cmであり,他の副腎腫瘍径より大きかった(P < 0.0001)。手術術式は腹腔鏡下手術が13例,開放性手術が4例であった。出血量は褐色細胞腫例で有意に多く(P = 0.0021),ヘモグロビン値の低下についても褐色細胞腫例で高かった(P < 0.0001)。腹腔鏡下手術例では手術時間は平均182.2分でありその他の副腎腫瘍より長かった(P = 0.0061)。術後に昇圧剤を必要とした褐色細胞腫症例において昇圧剤を必要としなかった症例に比べ,術前の血中ノルアドレナリン値,尿中ノルアドレナリン値,尿中VMA値が有意に高かった(P = 0.0237,P = 0.018,P = 0.0052)。 【考察・結論】 褐色細胞腫の腹腔鏡下手術では手術時間は長く血圧の変動や,大きい腫瘍径が関係していると考えられた。術後に昇圧剤を必要とした症例は,術前の血中・尿中ノルアドレナリン,尿中VMAが高く,これらの値は術後に昇圧剤使用を必要とする予測因子となると考えられた。
ISSN:0387-2289
2189-0285
DOI:10.14963/stmari.44.109